今夜も満月が遊びにきている。
彼女はいつものようにゆったり。
僕はかりかり。明日病院の検査の結果がわかるのだ。
「何とかなるわよ」
と満月。
「何ともならない!」
とぼく。
「病院なんて嫌いだ!検査、検査で薬ばっかり出して」
「まあまあ」
と満月。
「何とかなるわよ」「まあまあ」「心配しないで」
この三つが満月の口ぐせ。
「じゃあ、君がかわりに行ってくれるかい?」
「あたしはお月様だから。お月様が病院に行くとみんなびっくりするでしょう」
満月が真剣な顔で言ったので、思わず吹き出してしまう。
「そりゃあ、そうだ。お月様を診てくれる先生なんていないし。満月は病気にならないの?」
たずねてみると、
「たまにはなるわ。でも何とかなるわよ」
「何とかなる、本当に?」
「うん。三日月の時に、とがった所が欠けたことがあって、ちょっと焦ったけど、流れ星が見つけてくれた」
「痛くなかった?」
「痛かったよ。わんわん泣いちゃった」
それを聞くと、ぼくはちょっと安心した。「何とかなるわよ」の満月でも泣くことがあるんだ。
胸の中のしこりがふわっと軽くなる。
「検査の結果が悪かったら、ぼくも泣くよ」そう言ってみると
「うん、それがいいわ」と満月。続けて、
「しんは見栄っ張りだから。悲しい時にはとことん悲しむのが一番。心配しないで」
心配がなくなったわけではないが、ぼくはベッドに横になった。満月は口笛を吹きはじめた。
サティーのジムノペティー。ちょっと音程がはずれているけど、それが満月らしい。
ぼくが眠りに落ちる寸前、満月はまだ星が光る明けがたの空へ帰っていった。