ペンギンが冷蔵庫から出てきた。
白と黒のツートンカラーだ。
ぼくが飲もうと思っていた缶ビールを手にしている。
よたよたと歩いて、応接間のソファーに座った。
「ふう、疲れた」
そう言った。
「どこからきたんだ?」
たずねると、
「動物園」
なるほど。
「いそがしいのかい?」
たずねると、
「うん」
こっくりと頷いた。
その後、缶ビールを開け、ごくごくと白い喉を鳴らして飲む。
「ペンギンであることに疲れたんだ」
飲み終わったあと、ぽつりと言った。
なかなか哲学的だ。
「そういうこともあるかも」
頷くと、
「ペンギンだって、息抜きしたい」
目をぱちぱちしながら言った。
「息抜き?」
「ごろごろするとか」
「ごろごろできないの?」
「できないよ。ペンギンはかわいらしく、ちょこちょこ歩き回っていないと」
なるほど。
ペンギンは急にテレビのリモコンを取って、スイッチを入れた。
ナイターの中継だった。巨人対阪神。1対10で阪神が勝っている。
しばらく一緒にみた。
「つまらん」
つぶやいて、ペンギンはスイッチを切った。
「面白かったのに」ぼくは口を尖らせた。アンチ巨人なのだ。
「1対1が一番いい」
なるほど。
「星を見たい」そう言って、ちょこちょこと歩き、ベランダに出る。
満天の星空だった。
「宇宙の果てはどこにあると思う?」
ペンギンがたずねた。
「知らんよ」
そう言うと、
「だから、人間は馬鹿だ」
ペンギンは吐き捨てるように言った。
ペンギンはくちばしを上げ、星空を見ている。
「あの星の光が今度地球に届くときには、もうぼくは死んでいる」
明るい星のひとつを指して、ペンギンは言った。
ペンギンのつぶらなひとみが星明りで、かすかに光っている。
「もう帰る」
唐突にペンギンが言った。
よたよたと歩いて、部屋に入り、冷蔵庫の前に立つ。
「さようなら。ありがとう」
ペンギンがひょっこり頭を下げた。
「どういたしまして」こちらも頭を下げる。
「たまには宇宙の果てについて考えること」
そう言い残して、ペンギンは冷蔵庫を開けた。