そいつは
見るも
おぞましい
怪物
うねうね
とうねる
触角
顔についた
無数の目
どんより
曇った
魚の目
裂けた口
鋭い歯が
無数に並ぶ
大きな口
くさい息を
吐きながら
毛むくじゃら
の太い足で
いつでも
どこでも
ぼくを
追いかけてくる
散歩のときも
信号待ちのときも
ガールフレンドと
デートするときも
ひとりでご飯を
食べるときさえ
ぬっと
現れる
そいつが
いやで
いやで
たまらず
ぼくは
逃げて
逃げて
ある時
とうとう
追い詰められた
夢の中の
崖の上
逃げ道なし
突進してくる
そいつに
目をやると
震えている
小刻みに
ぶるぶると
そして
もっとよく見ると
涙が
無数目から
ぼろぼろ
小さな涙が
胸の中で
何かが
はじけた
おそるおそる
腕を伸ばし
そいつを
抱きしめた
怪物
ではなく
怖がり屋で
寂しがり屋
ひょっとすると
生きられなかった
ぼくの半身?
だとしたら
ぼくはぼく自身
から目をそむけて
いたわけで---。
ずるずる
とみっともなく
鼻水を
流しながら
ぼくはその
怖がり屋で
寂しがり屋
を抱きしめ
続けた