神戸の警察署に着いたのは夜9時前だったと思う。地下のガレージの大きなシャッターが
開いて中に入ると、事故車両が何台も置いてある。そのほかに証拠として押収されたのか
トイプードルが柵に入れられていて、不安そうな目で私を見ていた。
ここからは手錠に加えて「腰紐」をまかれ警察官ににぎられて歩く。
3階の取調室に案内され、パイプ椅子に手錠・腰紐がつながれる。これから取り調べが始まる
ワケだが、私はいったいなぜ、何をしてここに連れてこられなければならなかったのか?
話はさらに1年前にさかのぼる。
以前私は勤めていた会社で店舗の責任者を任されていた。店舗の日々の売上を出し入れする
通帳を管理し、日々持ち歩いていた。
私は不覚にも退職したあとその通帳を意識なく持ち帰ってしまったのだ。念を押しておくが決して
意図的に持ち帰ったわけではない。その通帳はいわゆる使われることがなくなった古い通帳で、
1円も入ってない通帳だったので特に意識することなく持ち帰ってしまったのだった。その証拠に
会社も返却を要求しなっかた。
その通帳に金が入っていることに気づいたのは平成10年の秋のことだった。この金について私は
会社が気づいてない、使ってもバレない金だと思い込んでしまい、ちょこちょことつまんでいた。
結果、結構な金額を使い込んでしまい、それに気がついた本来の持ち主が警察に届けた。
罪名は「窃盗罪」
刑法第三十六章 第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
その日の取り調べは一時間ほどで終わり、指紋採取・写真撮影のあと留置所で夕食をとった。
もう22時で就寝時間を過ぎていたので、部屋ではなく留置所1階の長椅子での夕食だった。
その日のメニューは中華丼のようなものだったが、冷めていてとても食べられたものでは
なかった。
看守より留置所においてのいくつかの注意と今後番号で呼ばれることを聞かされる。
私の番号は「358番」
2階の房部屋の扉が開いて、被疑者「358番」としての留置所の生活が始まった。