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日本ダービーは凄く良かった。
ジャンポケも強かったし角田もカッコ良かった。特に角田は、本当にカッコ良かった。
騎手ってやつは、日本ダービーに勝つと次の日からダービージョッキーと言われ、
一目置かれるようになるんだ。
人気も増大し年俸は跳ね上がり一気にガラッと世界が変わる。
「ダービージョッキーになる事は一国の王になる事よりも難しい」
今は亡き競馬の神様、大川慶次郎氏の言葉である。
俺は今まで角田で散々馬券を大損してきた。殺意を覚えた事さえある。
でも、そんなのもうどうでもいい。
昨日の角田は、素直にかっこ良かった。それでチャラだ。
今年も日本ダービーはやっぱり素晴らしかったし、
これでまた競馬をやめられそうにはなくなった気がする。
ただ１つ残念な事があった。某所の俺の競馬予想でまた犠牲者が出てしまった事だ。
何回やってもこの感触だけは慣れる事が出来ない。
日本ダービー終了後、携帯が鳴る。着信名は「こころ」。
こころと言う名前はその名の通り、本人が夏目漱石の『こころ』を読み
ひどく感銘を受けてつけた名前だ。しかし当の本人の性格はと言うと、
相手構わず死ねだと殺すだの心無い発言を連発。
世の中広しと言えどもここまで分かり易い名前負けも珍しいだろう。
そして、そんな血も涙もないひどい男が俺の予想を信じてくれたんだ。
今年の日本ダービーの勝ちタイムは、２分２７秒。その２分２７秒の間、こころは
俺を信じてくれたんだ。
なのに、俺はそれを裏切った。
「財布すっからかんになっちゃって。ごめんやけど今日の飲み会行かれへんわ」
こころは電話口でそれだけを言った。絶対に俺を責めようとはしなかった。
「ジャックダニエルの飲み比べまた今度やわ、ほなまたな」こころは明るく受話器を切った。

俺が奢るから。
そう口まで出かけて言えなかった自分が情けなくて、悔しくて、恥かしかった。
　
　
　
　　

　
　
※ちなみに僕はその後、バブル組のＡＣさん、太田さんと合流して、
　 美味しいお酒やら新鮮な海の幸やら色々とご馳走になりました。
　 なんか酒池肉林って感じでした。よくわかんないけど。