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ちくび黒サンボこと鈴木智恵は40分近く遅れて改札口から出てきた。
バイトが長引いた事、親を騙すのに時間がかかった事、電車に乗り遅れた事。
そんな事を話しながら阪急東通りを南に歩いた。
この日、鈴木はめずらしく色眼鏡をかけていた。
それは80年代を彷彿とさせるナス型でレンズは大きく、薄い橙色をした色眼鏡だった。
本人曰く、アユと同じヤツ、らしい。だからと言って鈴木はちっともアユに似ていなかった。
むしろアンチアユという感じでもあった。鈴木は今日も不細工だった。
そこからいつものように12.6という呑み屋に向かった。
そこで俺は借りていた27冊の少女漫画を鈴木に返した。
俺は、今の今まで少女漫画は糞だと思っていた。いや今でも少し思ってるけど。
少女漫画が何故つまらないか、それを日々考え続けると、
とどのつまりやっぱり女が描いてるからなんだと確信する。
これはまた男尊女卑とかいう的外れな事を言われそうなんだけど、
女が漫画を描いてておもしろいわけがない。
池田理代子然り魔夜峰央然り俺の心は動かなかった。
いやいや、漫画だけじゃない。小説、音楽、絵画。
芸術・文化と呼ばれるものは女はまるっきり駄目。そこらへんの感性が抜けている。
芸術とは想像力。玉を7つ集めて龍に願い事をするなんて発想は女じゃ思いつかないだろう。
小学校の頃、音楽室の壁に貼られているクラシックの作曲家が
すべて男なのがたまらなく不思議だった。
しかし俺のその疑問に先生をはじめとする大人達は、誰も答えてはくれなかった。
俺は書物を読み漁り、それは女が馬鹿だから、という結論に達するまで時間はかからなかった。
そこでこの借りた27冊の少女漫画だ。
先日何気なく寝る前に読んだ。そして、震えた。
震えた後、布団の中で丸くなって、嗚咽した。
大の男が、少女漫画を読んで嗚咽した。
大の大男が、190を超える身体を小さく小さく丸めて、嗚咽したんだ。
これがどれだけの事か分かってくれるだろうか。
俺は登場人物の総二郎にかつての自分をみていた。
そして、俺は少女漫画を認めざるを得ないと思った。
この日俺は、酒のせいにして1度だけ初めて鈴木を下の名前で呼んだ。
鈴木は聞えない振りをした。
それでいいと思った。そうしてくれなければ困るとも思った。
バイトが長引いた事、親を騙すのに時間がかかった事、電車に乗り遅れた事。
そんな事を話しながら阪急東通りを南に歩いた。
この日、鈴木はめずらしく色眼鏡をかけていた。
それは80年代を彷彿とさせるナス型でレンズは大きく、薄い橙色をした色眼鏡だった。
本人曰く、アユと同じヤツ、らしい。だからと言って鈴木はちっともアユに似ていなかった。
むしろアンチアユという感じでもあった。鈴木は今日も不細工だった。
そこからいつものように12.6という呑み屋に向かった。
そこで俺は借りていた27冊の少女漫画を鈴木に返した。
俺は、今の今まで少女漫画は糞だと思っていた。いや今でも少し思ってるけど。
少女漫画が何故つまらないか、それを日々考え続けると、
とどのつまりやっぱり女が描いてるからなんだと確信する。
これはまた男尊女卑とかいう的外れな事を言われそうなんだけど、
女が漫画を描いてておもしろいわけがない。
池田理代子然り魔夜峰央然り俺の心は動かなかった。
いやいや、漫画だけじゃない。小説、音楽、絵画。
芸術・文化と呼ばれるものは女はまるっきり駄目。そこらへんの感性が抜けている。
芸術とは想像力。玉を7つ集めて龍に願い事をするなんて発想は女じゃ思いつかないだろう。
小学校の頃、音楽室の壁に貼られているクラシックの作曲家が
すべて男なのがたまらなく不思議だった。
しかし俺のその疑問に先生をはじめとする大人達は、誰も答えてはくれなかった。
俺は書物を読み漁り、それは女が馬鹿だから、という結論に達するまで時間はかからなかった。
そこでこの借りた27冊の少女漫画だ。
先日何気なく寝る前に読んだ。そして、震えた。
震えた後、布団の中で丸くなって、嗚咽した。
大の男が、少女漫画を読んで嗚咽した。
大の大男が、190を超える身体を小さく小さく丸めて、嗚咽したんだ。
これがどれだけの事か分かってくれるだろうか。
俺は登場人物の総二郎にかつての自分をみていた。
そして、俺は少女漫画を認めざるを得ないと思った。
この日俺は、酒のせいにして1度だけ初めて鈴木を下の名前で呼んだ。
鈴木は聞えない振りをした。
それでいいと思った。そうしてくれなければ困るとも思った。