■有馬記念 | Not Found 第3章

■有馬記念

有馬記念。
言わずと知れた日本最高峰のレース。その売上、実に700億円なり。
毎年発売締め切り1時間前を切ると、1分間あたり3億円のペースで馬券が
売れていくという、この国のどこが不況なんだと思える異様な状況が繰り広げられる。
有馬だけは取りたい。競馬ファンなら誰もがその年最後に願う事。
有馬を取るか取らないかで、おせちのレパートリーが決まり、重箱の段数が決まる。
オグリキャップが勝った年、お年玉が10倍だった事。
スペシャルウィークが負けた年、遊玄亭をキャンセルして彼女と別れた事。
たがが有馬、されど有馬。人の人生をも狂わす有馬記念。
有馬だけは下手な馬券は買えない。
競馬ファン同士で昔の有馬記念の話をする度、あの年はあの馬を買っていたとか
あの馬は消してしまったとか何年先までも自分の買った馬券と向かい合う事になる。
つまり有馬の馬券は、そのまま己の競馬の履歴書となるんだ。
そして俺は5年後、10年後言いたい。
あの年、一頭の3歳牝馬が本気で、真剣に、勝つと思っていたと。
ファインモーション単勝。