■ | Not Found 第3章

仕事を休んで、1年半ほど付き合っている美砂子っていう人と007を観に行った。
こういう事を書くとまた日本人なお前らは、日本人しちゃってるお前らは、
やれ勤労の義務がどうのこうので駄目人間だって言うかもしれないが、
前の日に全財産の8割を賭けて挑んだ中国人とのトランプで何もかもなくなって、
何もかもがどうでもよくなって、朝起きて職場とは反対に向う電車に乗って、
1ヶ月振りぐらいに会いに行ったわけだ。
そしたら向こうも仕事を休む事にしたんで、9時半から始まる上野の映画館に向った。
朝の9時半から007を観ている大の大人がいるのかと思いきや、これが超満員。
そしてまたこの007が面白い。もうこういう映画には細かいツッコミはいらない。
いかにも悪そうな大ボスみたいなのが、何が欲しいってジェームズボンドに
聞くシーンがあるんだけど、そこでのジェームズボンドの答えが「速い車」だもん。
これは凄い。この映画のキモ。他の大人が言ったらただの頭の悪い近所の親父になっちゃうんだけど、
ジェームズボンドが言うからどこまでもカッコイイ。思わずうなずいちゃう。
映画が終わるとちょうど昼の12時を回ったところで、ご飯でも食べようかって、
美砂子さんがカバンから、東京一周グルメの旅なんて本を広げて道の真ん中で読み出しちゃって、
ここが良いとかここが近いとか、結局有名なラーメン屋に行って食べたんだけど、
そこで俺はさっき観た映画についてあーだこーだって色々と語ってるんだけど、
美砂子さんは塩ラーメン食べながら、でかい声で「これ、たいしたことない」なんて言って、
パッて向こうを見たらラーメン屋の親父が腕組みしてジーッとこっちを見ていて、まいった。
そのあと、安いモーテルに行ったら今度は受付の禿げた親父が何故かドラえもんの全身タイツ着てて、
全身タイツって言っても首から上はただの親父で便所のサンダル履いて「3500円です」なんて言って、
そんで5千円渡したら「お釣りです」って、四次元ポケットみたいところから1500円を出してきて、
これ子供が見たら泣き出すだろうなと思いつつ、すったもんだの末、夕方まで爆睡。
それからアメ横で、帽子と口紅2本と新しい携帯電話が欲しいって言うんで買って渡して、18時半に別れた。
帰り道、今日が人生のピークじゃないかしらと本気で思った。のび太口調で本気で思った。