ミュージカル「タイム・フライズ」で共演した堺谷展之 主演の舞台「ONとOFFのセレナーデ」を観てきました。

落ち着いた低音ボイスでクールな大人の男性を演じる、私の知らなかったノリ君の一面を見れました。プロ園児からの振り幅が凄いのもあって余計に感動したし、同い年の役者として嫉妬した(笑)細かい仕草ひとつひとつ研究され尽くしていて感動しました。みなさん是非ノリ君の芝居を観てください。

私、小劇場は4回くらいしか出た事ないのですが、あの小劇場でなければ成し得ない完全暗転がすごく好きなんです。それと、キャパが狭いからこそ生まれる、完全なる無音の間。音楽やダンスの盛り上がりで誤魔化されない、静かで純粋な芝居の時間が、とても心地よかったです。

ちなみに、私のブログを読んでくださっている方の多くはクラシック関係の方なので、小劇場を知らない方が多いと思いますが、いわゆる小ホールとは違います。地下のライブハウスを想像してもらうと良いと思います。あんな感じのサイズの劇場の事を小劇場と言います。

物語の内容は葬儀屋と遺言屋と遺族とのいざこざの話で、大きく取り上げられているのが「遺骨を粉末にして山や海に撒く」いわゆる「散骨」です。知らない人もいるかもしれませんが、一応ちゃんとした葬送方法です。故人は遺言で「葬儀はせずに、遺骨は散骨してほしい」と願うのですが、遺族はそれを受け入れられず、というエピソードが出てきます。

これ実は私にとってすごく身近な話で、というのも20年近く前に亡くなった私の祖父が散骨を希望していたらしいのです。私がそれを初めて聞いた時がいつだか覚えていませんが、子供の頃だったと思います。私はそれをすんなり受け入れられました、なんなら「死んで自然に帰れる、なんて素敵なんだろう」と思ったものです。が、遺骨をすり潰すのにほ抵抗がある、お墓に入れずに山にばら撒くなんて罰当たりな、というのが一般的な感覚なのですね。

ノリ君が演じた葬儀屋の男は、死んだ人間に意思は無いのに遺言を聞き届ける意味はあるのか?という考えの人間で、自然葬を気色悪いとさえ感じていたのですが、心を許せる数少ない友が死の間際に散骨を願い、初めてそれを受け入れます。

私自身も、死後のあれこれは残された人間のためにやるものだと思っているタイプで、父が祖父の願いを聞き届けたいと思っているなら、祖父の願い通り散骨すればいいじゃないか、と思っていたけど、もしかして決断するのは勇気が必要だったのかな、と、そんな事を考えさせられたお話でした。