アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170219
【雨】《18日の続き》
得意の絶頂にいるYは、あまりの嬉しさに身の置き所がなくて、体をねじってみたり、近くの電信柱にしがみついたり、もう少しで気絶するのではないかと、心配になる位興奮している。
「Yちゃんそのスケーターちょっと乗っていい?」
頃合をみて誰かが頼む。
「ウン、みんなかわりばんこに乗っていいよ。三輪車も乗っていいよ」
Yは機嫌良く自分のオモチャを皆に貸して悦に入っている。
「あ〃ー、腹へったなぁ、何か食うものねえかなぁ」
悪知恵の働く奴が、見当違いの方に顔を向けながら、大きな声で独り言を言う。
それを耳にしたYが、家の中に駆け戻って行ったのを横目で見ながら、(うまくいったな)とお互い目で合図する。
いくらもたたない内に、Yが両手にいっぱいお菓子を抱えて家から走り出て来る。
近くをウロウロしていると、Yの家の人に見付かってしまうので、何人かがYを急いで家の人の視野から外れた方へ誘導し、「アレ、そんなにお菓子を持ち出すと、母ちゃんに怒られるぞ」などと、心にもないセリフを吐く。
「ウウン、大丈夫だよ。いっぱいあるから、これ位持ち出したって分かりゃしないから」
「そうか、んじゃあみんなデク(ごちそう)になるか」
悪巧みの親玉がYからお菓子を受け取ると、意外と平等に分けてくれるのだ。
この時だけは、Yにとって多勢の仲間と一緒に過ごせる、正に珠玉の時間なのだが、その結末は大抵の場合、おだてに乗ってお菓子を持ち出した罰に、外の炭小屋に閉じ込められて、今にも死にそうな声で泣き喚く事になる。
そんな時は、Yが可哀想なので、家の人の目を盗んで炭小屋の近くに忍び込み、板壁の隙間から「ウーウーウ」と変な唸り声でおどしたり、小屋の隅にへばりついているYの背中を、節穴から突っ込んだ棒の先で突付いたりして付き合ってやった。http://www.atelierhakubi.com/

著者: 大原 照子
タイトル: 1つのボウルでできるお菓子―型も1つで全部できます

著者: サトー ヨーコ
タイトル: 贈ってウケる作ってハマるおもしろお菓子

著者: 山本 麗子
タイトル: 101の幸福なお菓子―最高に楽しい時間のための、とっておきのスイート
得意の絶頂にいるYは、あまりの嬉しさに身の置き所がなくて、体をねじってみたり、近くの電信柱にしがみついたり、もう少しで気絶するのではないかと、心配になる位興奮している。
「Yちゃんそのスケーターちょっと乗っていい?」
頃合をみて誰かが頼む。
「ウン、みんなかわりばんこに乗っていいよ。三輪車も乗っていいよ」
Yは機嫌良く自分のオモチャを皆に貸して悦に入っている。
「あ〃ー、腹へったなぁ、何か食うものねえかなぁ」
悪知恵の働く奴が、見当違いの方に顔を向けながら、大きな声で独り言を言う。
それを耳にしたYが、家の中に駆け戻って行ったのを横目で見ながら、(うまくいったな)とお互い目で合図する。
いくらもたたない内に、Yが両手にいっぱいお菓子を抱えて家から走り出て来る。
近くをウロウロしていると、Yの家の人に見付かってしまうので、何人かがYを急いで家の人の視野から外れた方へ誘導し、「アレ、そんなにお菓子を持ち出すと、母ちゃんに怒られるぞ」などと、心にもないセリフを吐く。
「ウウン、大丈夫だよ。いっぱいあるから、これ位持ち出したって分かりゃしないから」
「そうか、んじゃあみんなデク(ごちそう)になるか」
悪巧みの親玉がYからお菓子を受け取ると、意外と平等に分けてくれるのだ。
この時だけは、Yにとって多勢の仲間と一緒に過ごせる、正に珠玉の時間なのだが、その結末は大抵の場合、おだてに乗ってお菓子を持ち出した罰に、外の炭小屋に閉じ込められて、今にも死にそうな声で泣き喚く事になる。
そんな時は、Yが可哀想なので、家の人の目を盗んで炭小屋の近くに忍び込み、板壁の隙間から「ウーウーウ」と変な唸り声でおどしたり、小屋の隅にへばりついているYの背中を、節穴から突っ込んだ棒の先で突付いたりして付き合ってやった。http://www.atelierhakubi.com/
著者: 大原 照子
タイトル: 1つのボウルでできるお菓子―型も1つで全部できます
著者: サトー ヨーコ
タイトル: 贈ってウケる作ってハマるおもしろお菓子
著者: 山本 麗子
タイトル: 101の幸福なお菓子―最高に楽しい時間のための、とっておきのスイート