アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170126 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170126

 【晴】《25日の続き》
「そりゃあオメエ、色々事情はあるだろうけんどよお、人を脅して金を取るなあ良くねえぞ。第一オメエ、そんな金で女房子供を養ったって、ロクな事ねえだろうによ」

「そうだそうだ。いまにバチが当るぞ」

 皆てんでに流しの獅子舞に説教をしている内に、7丁目の交番のおまわりさんが、自転車をふっとばしてやって来た。

「ご苦労さんご苦労さん、あとはこっちでやるから皆引き上げてもらっていいよ」

 おまわりさんの姿を見ると、流しの獅子舞は今にも泣き出しそうな顔でガックリとうなだれ、「あ〃、こちとらだって生きるか死ぬかの瀬戸際なんだよな。借金もあるしよ、ガキもいるしよ」などとこぼしながら頭を抱え込んでしまった。

「何を泣き言並べてるんだ。非力な女子供を脅してユスリタカリをして来たんだから、悪党らしく覚悟をしろ」

 おまわりさんは物凄い剣幕で獅子舞を怒鳴りつけると、乗って来た自転車を押しながら交番に連れて行った。

「あの獅子舞が捕まったって。オオよかった、私ゃこの間あいつに乗り込まれてさ、10円渡したら馬鹿にするなって逆に怒鳴られて100円も持って行かれたんだから」

 使いから帰った隣の叔母が、さもホッとしたという様子で、母屋に駆けつけて来た。

 私は何だか、自分が大手柄を立てたような気分になって、その日は浮き浮きしていた。

 翌朝になると、獅子舞逮捕の噂は、もう皆に伝わっていて、学校への道では、その話でもちきりだった。

 私は昨日の現場の話を聞かせる楽しみで、胸をふくらませて学校に急いだ。http://www.atelierhakubi.com/