アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170120
【晴】《19日の続き》
それぞれが物影に落ち着いて、ようやく乱れた息がおさまった頃、まさか私達が待ち伏せをしているとは夢にも思っていない岡島が、のんびりと目の前を通り過ぎて行く。
岡島の家は線路沿いに密集する、通称「カスバ」の家並みを平行に通る道から、愛宕山の低い切通しの手前を左に入った山沿にある。
岡島がポケッと間延びした顔で左に曲って私達に背を見せたところで、足音を忍ばせながら一斉にあとを追い、もう間もなく家の玄関に近付くという場所で、物も言わず担ぎ上げてひっさらった。
岡島は何が起ったのか直ぐには理解できず、びっくりし過ぎて声も出ない有様だったが、枕木の柵をくぐって線路をまたぐ頃になると、どうやら自分の立場が飲み込めたのか、機関車の汽笛も顔負けの悲鳴を上げながら、バタバタと大暴れして逃げようとした。
「岡島よ、いくら逃げようとしたってダメだからな。これから死ぬまでむぐしてやるから覚悟しろよな。ヒッヒッヒッ」
私は相手が思い切りビビるような言い方で岡島をいたぶった。
「馬鹿やめろ。そんな事したらクソもらしてやるからな。小便だってしてやるからな。あ〃やめろ、やめろ馬鹿」
何を言おうと構わずに、私達は岡島を白石山房の芝生の上におろすと、小野寺と家住と宮内が身動きの出来ないように押さえ込んだ。
人間は脇の下をむぐされると死ぬほどくすぐったい。
私はおもむろに岡島の脇の下に指をあて、「これから岡島のむぐし刑を始める」と厳かに宣言すると、岡島は「ヤアメロー頼む、むぐし刑だけはやめてくれえ。たあのむうー」と絶叫した。
「むぐし刑」の恐ろしさは誰もが身を持って知っているので、岡島の気持ちはよく分かったが、それだけに四人共処刑する快感の誘惑に勝てなかった。
岡島は私が軽く脇の下に手を出しただけで、「ウワッハッハ、ウワッハッハ」と身をよじって苦しんでいる。
くすぐる手を段々激しく動かすにつれて、岡島は「ギャッハッハ、ウエーン、ギャッハッハ、ウエーン」と、何が何だか分からない喚き声をあげながらのたうち回った。
岡島の体が弓形に反り返って白目をむき始めたので、私達は「むぐし刑」を終了したが、岡島はよほど悔しかったのか、「テメエ、いつか殺してやる。今度は俺がオメエをむぐすから覚えておけよ。チキショーバカヤロー」と、泣き喚いて悪態をつきながら、そこら中を転げ回っていた。
そんな岡島を置き去りにして、私達は意気揚々とその場を引き上げた。http://www.atelierhakubi.com/
それぞれが物影に落ち着いて、ようやく乱れた息がおさまった頃、まさか私達が待ち伏せをしているとは夢にも思っていない岡島が、のんびりと目の前を通り過ぎて行く。
岡島の家は線路沿いに密集する、通称「カスバ」の家並みを平行に通る道から、愛宕山の低い切通しの手前を左に入った山沿にある。
岡島がポケッと間延びした顔で左に曲って私達に背を見せたところで、足音を忍ばせながら一斉にあとを追い、もう間もなく家の玄関に近付くという場所で、物も言わず担ぎ上げてひっさらった。
岡島は何が起ったのか直ぐには理解できず、びっくりし過ぎて声も出ない有様だったが、枕木の柵をくぐって線路をまたぐ頃になると、どうやら自分の立場が飲み込めたのか、機関車の汽笛も顔負けの悲鳴を上げながら、バタバタと大暴れして逃げようとした。
「岡島よ、いくら逃げようとしたってダメだからな。これから死ぬまでむぐしてやるから覚悟しろよな。ヒッヒッヒッ」
私は相手が思い切りビビるような言い方で岡島をいたぶった。
「馬鹿やめろ。そんな事したらクソもらしてやるからな。小便だってしてやるからな。あ〃やめろ、やめろ馬鹿」
何を言おうと構わずに、私達は岡島を白石山房の芝生の上におろすと、小野寺と家住と宮内が身動きの出来ないように押さえ込んだ。
人間は脇の下をむぐされると死ぬほどくすぐったい。
私はおもむろに岡島の脇の下に指をあて、「これから岡島のむぐし刑を始める」と厳かに宣言すると、岡島は「ヤアメロー頼む、むぐし刑だけはやめてくれえ。たあのむうー」と絶叫した。
「むぐし刑」の恐ろしさは誰もが身を持って知っているので、岡島の気持ちはよく分かったが、それだけに四人共処刑する快感の誘惑に勝てなかった。
岡島は私が軽く脇の下に手を出しただけで、「ウワッハッハ、ウワッハッハ」と身をよじって苦しんでいる。
くすぐる手を段々激しく動かすにつれて、岡島は「ギャッハッハ、ウエーン、ギャッハッハ、ウエーン」と、何が何だか分からない喚き声をあげながらのたうち回った。
岡島の体が弓形に反り返って白目をむき始めたので、私達は「むぐし刑」を終了したが、岡島はよほど悔しかったのか、「テメエ、いつか殺してやる。今度は俺がオメエをむぐすから覚えておけよ。チキショーバカヤロー」と、泣き喚いて悪態をつきながら、そこら中を転げ回っていた。
そんな岡島を置き去りにして、私達は意気揚々とその場を引き上げた。http://www.atelierhakubi.com/