アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170118
【晴】《17日の続き》
「誰だって間違えたり忘れたりする事があるだろう。先生だって人間なんだから物忘れする事だってあるんだ。そうやって人の弱みを責めるのは、一番いけないんだぞ」
(ウソだ。先生は忘れたんじゃなくて最初から知らねんだ)
私は内心そう思ったが黙っていると、先生は苦し紛れの言い訳を並べながら、何となくその場を納めてしまった。
「罰として先生がいいと言うまで廊下に立ってろ」
結局一番ワリを食ったのは私で、またもや教室前の廊下に水の入ったバケツを両手に持たされて立たせられた。
「アーラ渡辺君、あなたまた立たされてるの。いつもいつもご苦労さんね」
四組で一番ひょうきん者の橋本が、女の渡辺先生の物真似をしながら私の前を通り過ぎ、また引き返して来ると、「今度は何をやって立たされたの」と、私が動けないのをいい事に、やりたい放題だった。
橋本は家が近所だったから、大抵の悪さは一緒にやっていたので、からかわれても腹は立たなかったが、前を通る先生達が、みんな私の頭をコツンとやって行くのには閉口した。
岡島と仁田山はそんな私の姿を見て、あいつ馬鹿だなと思ったのだろう。
6時間目の授業が終わり、下校前の掃除が始まると、私は岡島の姿をいつも目の隅に入れて、あいつに逃げられないように注意していた。
岡島もそれを知っているから、決して私を自分のそばには近付けなかった。
二人の無言の戦いが30分程続き、私がふと目を離したスキに、岡島の姿はどこにもなかった。http://www.atelierhakubi.com/
「誰だって間違えたり忘れたりする事があるだろう。先生だって人間なんだから物忘れする事だってあるんだ。そうやって人の弱みを責めるのは、一番いけないんだぞ」
(ウソだ。先生は忘れたんじゃなくて最初から知らねんだ)
私は内心そう思ったが黙っていると、先生は苦し紛れの言い訳を並べながら、何となくその場を納めてしまった。
「罰として先生がいいと言うまで廊下に立ってろ」
結局一番ワリを食ったのは私で、またもや教室前の廊下に水の入ったバケツを両手に持たされて立たせられた。
「アーラ渡辺君、あなたまた立たされてるの。いつもいつもご苦労さんね」
四組で一番ひょうきん者の橋本が、女の渡辺先生の物真似をしながら私の前を通り過ぎ、また引き返して来ると、「今度は何をやって立たされたの」と、私が動けないのをいい事に、やりたい放題だった。
橋本は家が近所だったから、大抵の悪さは一緒にやっていたので、からかわれても腹は立たなかったが、前を通る先生達が、みんな私の頭をコツンとやって行くのには閉口した。
岡島と仁田山はそんな私の姿を見て、あいつ馬鹿だなと思ったのだろう。
6時間目の授業が終わり、下校前の掃除が始まると、私は岡島の姿をいつも目の隅に入れて、あいつに逃げられないように注意していた。
岡島もそれを知っているから、決して私を自分のそばには近付けなかった。
二人の無言の戦いが30分程続き、私がふと目を離したスキに、岡島の姿はどこにもなかった。http://www.atelierhakubi.com/