アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170117 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170117

 【晴】《16日の続き》
 これには先生も少し口篭もってしまい、それから「小学校ではそこまでの勉強はしなくていいの。今は弁が上がると水も上がるって知っていればいいの」と、凄く投げやりな感じで捨てゼリフを吐きながら、まだ授業が終わっていないのに、机の上を片付け始めた。

 そんな様子を見ていると、私達は鬼の首でも取った気になり、「きぃたねんだきぃたねんだ、せーんせはきぃたねんだ、自分が分かんねから、コソコソ逃げるんだ」と、一斉にはやしたてたものだから、先生は完全に頭に来てしまった。

「渡辺こっちへ来い、早く教壇の前に来い」

 真っ赤な顔で声を震わせながら、先生は大声で私を呼んだ。

 (エーッ何で俺なんだよ。みんな同じじゃねえのかよ)

 私は内心物凄く不満だったが、これ以上逆らうと何をされるか分かったものではないので、しぶしぶ前に出て行くと、いきなり「東京が見える刑」をかけられてしまった。

 「東京が見える刑」は、頭を両手で掴まれて宙吊りにされる刑で、「むぐし刑」ほど苦しくはないが、見た目よりずっときつい。

 私は痛さをこらえながら「俺だけじゃねえもん、みんな言ったもん、何で俺だけやられるんだか分かんねえ」と、手足をバタつかせながら必死で抗議した。

「ウルサイ、お前が一番騒いでた」

「ウッソだー、俺より橋本とか木村の方が先に騒いでたもん。家住なんか一番デケぇ声出してたもん」

 私は自分だけお仕置を受けるのが悔しくて、ギャアギャア喚きながら抵抗したが、先生の馬鹿力にはどうしても勝てなかった。http://www.atelierhakubi.com/