アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170115 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170115

 【雨】
「渡辺よ、岡島と仁田山がオメエの事を馬鹿だって言ってたぞ」

 廊下ですれ違った時に木村が耳打ちして来たので、私は昼休みを待って二人を捕まえ、こっぴどく痛めつけようとてぐすね引いていたのだが、岡島の奴は早くも気配を察知したのか、いつの間にか雲隠れしてしまった。

 仁田山はこっちの思いに全く気付いてないのか、いつものように弁当をぱくついていた。

 あの頃の給食は一日おきだったから、弁当の日も一日おきにあったのだ。

 弁当を食べ終わった仁田山が、何人かと校庭に出て行くあとについて昇降口に出たところを、「オイ仁田山、オメエ俺の事を馬鹿だと言ったんだそうだな」と問い詰めると、仁田山は物も言わずに裸足のまま外に飛び出して逃げた。

 そんな事は予期していたので、私は直ぐに仁田山を捕まえると、ギャアギャア喚くのもかまわずに、最も重い「むぐし刑」に処した。

 ワハハ、ワハハと笑いながら泣いている仁田山が、とうとう声も出なくなるほど参ったところで刑を終えると、「馬鹿野郎、いつかテメエ殺してやるからな」と泣き喚いて地べたを転げ回っているのを尻目に、今度は岡島の奴を見付けるため、便所の裏や奴が身を潜めていそうな場所を探したが、とうとう捕まえる前に昼休みが終わったので、しぶしぶ教室に帰ると間もなく、5時間目の授業のために入って来た先生のうしろから、岡島の奴が涼しい顔で入って来た。

 (あの野郎今に見てろ)、私は奴の処刑を放課後まで延ばす事にして授業に集中した。http://www.atelierhakubi.com/