アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170108 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170108

 【晴】
 年末から休みになっていた火の用心の夜廻りが、今夜からまた久し振りに始まるので、私達は昼間から少し興奮気味だった。

 寒い中を毎晩のように夜歩きしていると、時には嫌になってさぼりたくなったものだが、半月近く休んでいると、今度は逆に寒風にかじかむ手の感覚が、かえって懐かしくなるのだから不思議だ。

 今夜は年が明けて最初の夜廻りだから、終わったあとに甘酒が出ることになっている。

 それも酒かすを溶かしたのではなくて、本物の甘酒が飲み放題なのだ。

 去年は三杯飲んで終わりにしたので、今年は四杯は絶対に飲んでやると、密かに決意しているが、八代の七杯には負けそうだ。

 一杯でも多く甘酒を飲めるように、夕飯は控えめにしようと思っていたけれど、空腹には勝てずに目いっぱい食べてしまったのもいつもの事だった。

 午後7時少し前、満腹感に後悔しながら家を出て集合場所に向かった。

 家の前の道に出ると、オブチンとマー公そしてオチ坊がダルマのように着膨れして通り掛かったので、「行くん?」と声を掛けると、「うん」と同時に返事が返って来た。

 足元も見えない闇の中を八雲神社まで歩いたが、途中で何人もの友達と一緒になった。

 みんな久し振りの夜廻りを楽しみにしていたのだろう。
中には年末以来の奴もいたので、もうおめでとうと言うには少し照れ臭かったので、「オース」といつもの挨拶になってしまった。

 本殿階段下の参道には、もう20人以上が集合していて、この分だと今夜は40人以上の列が出来そうだった。

「晃ちゃん遅いよ、私なんか30分も前から来てるよ」

 うしろから京子ちゃんが声を掛けて来た。

 私は内心(うへえ~、今夜は京子ちゃんが一緒かよ)と思ったが、口には出さずに我慢した。

 火の用心の行列は女子が入っても悪くはないのだが、私は出来れば男女別々の列にしてもらいたかった。
なぜかといえば女子の掛け声はキンキンして耳障りだったのだ。http://www.atelierhakubi.com/