アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170103 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170103

 【晴】
 正月の行事で「八木節大会」があったあと、学校ではしばらくの間八木節ブームが続き、休み時間には教室毎に「チャンチャンチャンチャカチャン」と対抗意識丸出しの競演が繰り広げられた。

 いくら郷土を代表する民謡とはいっても、中には嫌いな奴だっていたろうから、そういう連中には迷惑な事だったろう。

 特に昼休みには校舎が揺れ動く程の大騒ぎだったから、女子のほとんどは、私達を気違い集団のような目で見ていた。

 私達の四組には飛び抜けた名人という奴はいなかったが、チームワークだけは他の組に負けなかったので、太鼓の方は相当なものだった。

 教室では太鼓の代りに机を手の平で叩いて調子をとったから、どこかの組が始まると、待ってましたとばかりに他の組が次々と参加して、本当に校舎全体がドンドコドンドコと反響するのだ。

「お前ら何やってるんだ。毎日毎日気が狂ったみたいにバカバカ机引っ叩いて八木節みたいな真似して。いい加減にしないとお前ら廊下に立たせるぞ」

 石黒先生がこめかみに青筋を立てて飛んで来た。

 もう何度も先生に怒鳴られているのだが、一向に言う事を聞かないので、いつか大変な目に会うかもしれないという予感はしていたが、今のところはまだその心配はないようであった。

 ところが、ある日の出来事が事情を一変させ、それ以降私達は学校で「八木節」を出来なくなった。http://www.atelierhakubi.com/