アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170102 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170102

 【晴】
 小学校4年生の元旦は、弟と共に雑煮を食べ過ぎて、登校する事が出来なかった。

 みかんとお菓子は桜木のより子ちゃんが届けてくれたが、なぜ休んだと聞かれても、本当の事は言えないし、言えば皆の笑い者になるだけだったので、少し風邪気味だと嘘をついた。

「それじゃあ明日の新年会は出て来られないね」

 より子ちゃんは意地悪そうな薄笑いを浮かべて、上目使いで私を見ながら言った。

「明日はもう大丈夫だよ。絶対行くから」と私は慌てて答え、内心しまったと舌打ちしたが、もう間に合わない。

「へえー、ずいぶん都合の良い風邪だね」

 より子ちゃんは私の嘘をその場で見抜いていたのだ。

 二日は緑町子供会の新年会で、餅入り茹であずきの大きな鍋が出され、食べ放題の大盤振舞だったから、よほどの事がない限り欠席など出来るはずがない。

 その日朝飯は何も食わず、いつもの奴らと一緒に会場へ駆け付けると、町内の役員の人達や宮司の桜木先生の話が早く終わるように一心に祈りながら時を待った。

 長ったらしい話が終わり、いよいよ新年会が始まると、皆は先を争って鍋のまわりに群がり、係のオバさんが渡してくれるお椀を受け取った。

 最初の一杯は夢中で掻き込み、おかわりを貰いに鍋の前に並ぶ。

 二杯目も最初と同じ位の速さで食べ、三杯目あたりからやっと人心地ついて、皆ゆっくりと箸を運んだ。

 四杯目になると、さすがに食傷気味になり、全員惰性で口を動かすだけになる。

 そして最後は、もう二度と茹であずきは食べないぞと心に誓いながら会場をあとにした。http://www.atelierhakubi.com/