アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161230 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161230

 【晴】
 暮の大掃除は工場と母屋の両方を、二日掛けて片付けるのが毎年の事だったが、実際にはその数日前から、手の空いた者が少しづつ気が付いた所に手を入れておかなければ、とても二日間では終わらなかったのを憶えている。

 工場の方は職人さん達が中心になって要領良く掃除していき、母屋は前の日に早朝から手伝いの人達も来て、まるでお祭りのような騒ぎだった。

 特別に大きな家でもないのだが、あの頃の大掃除は、とにかく大変な大仕事だったのだ。

 まず家中の畳を上げて天日に干し、ススを払ったあとの木部は、柱だけでなく天井も乾拭きするのだ。

 障子は全部外して川に持って行き、しばらく水につけてから紙を剥すのだが、これは私達子供の役目だった。

 紙を剥して、少しノリの残った所はタワシできれいに落とし、乾いた布で水気をぬぐったあと乾燥させ、新しい障子紙を張るのだ。

 古いフスマを剥し、新しい柄のフスマ紙を張り替えるのを見ていると、まるで魔法のようだった。

 そんな手間ひまを掛ける大掃除だから、本当に大変だった。

 お昼は大抵がおにぎりかうどん、それも山盛りで出されたので何だか気分が浮き浮きして楽しかった。

 大掃除に合わせて畳が張り替えられる事もあったが、私は新しい畳の匂いがあまり好きではなかったから、それがない年はホッとした。

 古いながらもピカピカに磨かれた家の中には、新年を迎えるピンとした空気が張り詰めて、匂いまでが新鮮だった。http://www.atelierhakubi.com/