アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161221 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161221

 【晴】
 前の晩の冷え込みがやけに厳しいと思ったら、朝起きてみると、外は30cmにもなるかという大雪で、まだ盛んに降り続いていた。

 家の前の道を通る人達の声も、いつもとは違って浮き立っているだけではなく、余分な汚れを洗い流したかのように澄み切って聞こえるのが不思議だ。

 家の軒先から直ぐに積もる雪の厚さは、外に歩き出すのが怖いほどの迫力だった。

 こんなに朝早くから、もう誰か訪ねて来たのか、道から庭を通って玄関先まで足跡がついている。

 向かいの柳田鉄工所の屋根が、真っ白に雪化粧して目の届く限り続いているのが美しい。

 私は寒さも忘れて、じっと雪景色に見とれていた。

「何をしてるの、寒いから戸を閉めなさい」

 いつの間に台所から出て来たのか、前掛けで手をふきながら、母が私に言った。

「ウン」と返事をして戸を閉めると、全身が冷え切っているのに気付いて、思わず身震いした。

 今日は珍しく朝風呂があるらしく、玄関の土間奥の焚き口に火が入っている。

 その前に座って、叔父の清ちゃんがゆったりと火の番をしていた。

 薄暗い土間の床に、風呂釜の焚き口から漏れる火の光が赤々と映っている。

「ごはんの前にお風呂に入ってしまいなさいよ」

 母の言いつけに、私は隣の京子ちゃんに声を掛けた。

「京子ちゃん、母さんがお風呂に入ってしまいなって」

「ハーイ、分かった今行くよ」

 雪の日には、我が家はなぜか朝風呂が立つ。http://www.atelierhakubi.com/