アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170107
【晴】
夕方に母の使いで、近くの堀江八百屋に七草粥の材料を取りに行くと、そこにいたほとんどの人達が同じ物を買っていた。
「晃ちゃんお母さんのお使いかい。えらいね」
大抵の人が顔見知りなので気楽に声を掛けて来る。
大家族の我が家の七草は、よその家のものがママゴトに見えるほど量が多いので、私は受け取る時に少し恥かしかった。
「ハイ、用意してあるよ。重いから落とさないようにしっかり持っていきな」
堀江のおじさんから七草の入ったザルを受け取ると、私は急いでその場を離れた。
「ザルはあとで取りに行くから、置いておけばいいよ」
おじさんの声を背中で聞いて、私は振り返りもせずに「ウン」と答え、ずっしりとしたザルを抱えて家に向かった。
「買って来たよ」
私は玄関から入らずに勝手口にザルを置いて、手伝いの人と忙しそうにしている母に言った。
「ハイありがとう、重かっただろう」
「そうでもなかった」
「今夜は七草粥だよ。これを食べると風邪を引かないからね」
去年も母は同じ事を言ったけれど、私はやっぱり風邪を引いた。
だから内心(ヘン、うそばっかり)と思った。
それに私は七草粥があまり好きではなかったのだ。
なぜかといえば、七草の次の朝は昨日の残りが、決って出て来るからだ。
出来たての七草粥は美味しいとは思うけれど、翌朝のやつは何だか間が抜けているような気がするし、何といっても飽きてしまう。
それでも、正月の七日に食べる七草粥は、(あ〃、まだ正月なんだな)と思えるところは嫌いではない。
「ねえ、おかゆの中に餅入れてよ」
「本当はお餅入れないで食べた方がいいんだけどね」
母は少し文句を言いながらも、餅を焼いて入れてくれた。
「入れる前にお醤油つけてよ」
「おかゆに入れるのに、なんでお醤油つけるの」
「その方がおかゆも美味くなるんだから、お醤油つけてよ」
「変なことする子だねぇ」
母が入れてくれた餅のお醤油が溶けて絡まったところの七草粥は、味が少し濃くなって美味しかった。http://www.atelierhakubi.com/
夕方に母の使いで、近くの堀江八百屋に七草粥の材料を取りに行くと、そこにいたほとんどの人達が同じ物を買っていた。
「晃ちゃんお母さんのお使いかい。えらいね」
大抵の人が顔見知りなので気楽に声を掛けて来る。
大家族の我が家の七草は、よその家のものがママゴトに見えるほど量が多いので、私は受け取る時に少し恥かしかった。
「ハイ、用意してあるよ。重いから落とさないようにしっかり持っていきな」
堀江のおじさんから七草の入ったザルを受け取ると、私は急いでその場を離れた。
「ザルはあとで取りに行くから、置いておけばいいよ」
おじさんの声を背中で聞いて、私は振り返りもせずに「ウン」と答え、ずっしりとしたザルを抱えて家に向かった。
「買って来たよ」
私は玄関から入らずに勝手口にザルを置いて、手伝いの人と忙しそうにしている母に言った。
「ハイありがとう、重かっただろう」
「そうでもなかった」
「今夜は七草粥だよ。これを食べると風邪を引かないからね」
去年も母は同じ事を言ったけれど、私はやっぱり風邪を引いた。
だから内心(ヘン、うそばっかり)と思った。
それに私は七草粥があまり好きではなかったのだ。
なぜかといえば、七草の次の朝は昨日の残りが、決って出て来るからだ。
出来たての七草粥は美味しいとは思うけれど、翌朝のやつは何だか間が抜けているような気がするし、何といっても飽きてしまう。
それでも、正月の七日に食べる七草粥は、(あ〃、まだ正月なんだな)と思えるところは嫌いではない。
「ねえ、おかゆの中に餅入れてよ」
「本当はお餅入れないで食べた方がいいんだけどね」
母は少し文句を言いながらも、餅を焼いて入れてくれた。
「入れる前にお醤油つけてよ」
「おかゆに入れるのに、なんでお醤油つけるの」
「その方がおかゆも美味くなるんだから、お醤油つけてよ」
「変なことする子だねぇ」
母が入れてくれた餅のお醤油が溶けて絡まったところの七草粥は、味が少し濃くなって美味しかった。http://www.atelierhakubi.com/