アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161209
【晴】
“ツーツーレロレロツーレーロ、ツーレーロレツレロレシャン、ツレラレツレシャンシャンシャン、高崎観音ズロース取ればあ、なあらあ(奈良)の大仏かけて来るかけて来る”
ヒロやんが教えてくれたばかりの歌を、ギリ場のだるまストーブの前で歌っていると、母がいきなり頭をどやしつけた。
私はびっくりして逃げるのも忘れ、ただボーッと母を見ていた。
「本当にこの子は悪い子だ。そんな歌どこでおぼえたんだろう。私は恥かしくて外を歩けないよ全く」
「ちがうよ、ちがうよ、ヒロやんがこの歌は観音様と大仏様が出てくる、とても良い歌だから、しっかり憶えて学校やみんなの前で歌ってやれって言ったんだよ」
私はオイオイ泣きながら母に訴えた。
いきなりぶっとばされたのが悲しいというより、ほめてもらえると思っていたのが、逆に叱り飛ばされたのがショックだったのだ。
「ヒロッ、ヒロッ、ちょっとこっちにおいで」
母は大声で釜場の方に声を掛けたが、職人を呼び捨てにする時の母がどんな恐いか知っていたので、私は慌てて母の手が届かない所まで飛び退いた。
ヒロやんはゴム前掛けをつけたままギリ場に来ると、「何だんべ」とビクビクしながら言った。
「ヒロ、お前この子に変な歌を教えたね」
ヒロやんはしまったと首をすくめながら「教えてねえよ」とウソを言った。
「ウソ言いなさい、教えたとお前の顔に書いてあるよ。全く仕様がないんだから。いつまでもこんな悪さをしていると、おふくろさんに言いつけるよ」
ヒロやんは自分の母親が一番苦手で恐いのだ。
「すんません、もうしません」
ヒロやんがボソッと詫びを口にしたとたん、ギリ棒を使っていた何人かの職人さんが、ワッとばかりに大笑いしながら、そこら中を走り廻って騒ぎ出したので、私は自分がコケにされたのに気付いた。
それから何日間か、私はヒロやんと口を利かなかった。http://www.atelierhakubi.com/
“ツーツーレロレロツーレーロ、ツーレーロレツレロレシャン、ツレラレツレシャンシャンシャン、高崎観音ズロース取ればあ、なあらあ(奈良)の大仏かけて来るかけて来る”
ヒロやんが教えてくれたばかりの歌を、ギリ場のだるまストーブの前で歌っていると、母がいきなり頭をどやしつけた。
私はびっくりして逃げるのも忘れ、ただボーッと母を見ていた。
「本当にこの子は悪い子だ。そんな歌どこでおぼえたんだろう。私は恥かしくて外を歩けないよ全く」
「ちがうよ、ちがうよ、ヒロやんがこの歌は観音様と大仏様が出てくる、とても良い歌だから、しっかり憶えて学校やみんなの前で歌ってやれって言ったんだよ」
私はオイオイ泣きながら母に訴えた。
いきなりぶっとばされたのが悲しいというより、ほめてもらえると思っていたのが、逆に叱り飛ばされたのがショックだったのだ。
「ヒロッ、ヒロッ、ちょっとこっちにおいで」
母は大声で釜場の方に声を掛けたが、職人を呼び捨てにする時の母がどんな恐いか知っていたので、私は慌てて母の手が届かない所まで飛び退いた。
ヒロやんはゴム前掛けをつけたままギリ場に来ると、「何だんべ」とビクビクしながら言った。
「ヒロ、お前この子に変な歌を教えたね」
ヒロやんはしまったと首をすくめながら「教えてねえよ」とウソを言った。
「ウソ言いなさい、教えたとお前の顔に書いてあるよ。全く仕様がないんだから。いつまでもこんな悪さをしていると、おふくろさんに言いつけるよ」
ヒロやんは自分の母親が一番苦手で恐いのだ。
「すんません、もうしません」
ヒロやんがボソッと詫びを口にしたとたん、ギリ棒を使っていた何人かの職人さんが、ワッとばかりに大笑いしながら、そこら中を走り廻って騒ぎ出したので、私は自分がコケにされたのに気付いた。
それから何日間か、私はヒロやんと口を利かなかった。http://www.atelierhakubi.com/