アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161208 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161208

 【晴】《7日の続き》
「まあまあ御苦労様。さあ早く風呂に入ってさっぱりしてからご飯にしましょう」

 お風呂といっても、釜場の脇に置いてある大きな水桶に、湯釜の湯を汲んで水で薄めた中に入るので、普通の湯船の三倍位の大きさがある。

 コンクリートの床が直接洗い場になるから、一度に4~5人は楽に入れるのだ。

 その代り何の囲いもないので、周りからは丸見えだ。

 風呂から出て食卓につく三人と一緒に、私も一丁前に箸を取ったが、ヨッさんとハルさんはご飯の前に酒を飲むので、飯はヒロやんと私の二人が先に食べる事になった。

「おいヒロよ、あんまりがっついて俺達の分までおかず食うなよ」

 ヨッさんがヒロやんをからかうと、ヒロやんは物凄い勢いで飯を掻っ込みながら、「あいひょうふ(大丈夫)だよ、ふえんふ(全部)食いやひねえよ」と、ムキになって言った。

 おかずは野菜とアジとイカの天ぷら、マグロと赤貝の刺身、菊の酢の物、沢庵、海苔の佃煮、そして大根のみそ汁だった。

 私もヒロやんほどではないけれど、いつもなら絶対にお仕置になる程のがっつきようで飯を掻っ込んだ。

 みそ汁も天ぷらも何もかも、信じられない美味さだった。

「そんなに急いで食べなくても、ご飯は逃げて行かないよ」

 母は私を呆れたように眺めながら言った。

 私は今日一日で、自分が凄く大人になったような気がした。http://www.atelierhakubi.com/