アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161205
【晴】《4日の続き》
米軍基地がある土地柄なのか、チョコレートを箱ごと置いてあるなんて、足利ではお菓子屋でもない限りあり得ない話だったから、両手でさえズッシリと重い箱を受け取った時には、まるで世界中の宝物を一人占めしたような気分になった。
いくら抑えようとしても勝手に笑ってしまう顔をおじさんに向けて、「ありがとうございます。みんなで分けます」と、やっとの事で礼を言うと、おじさんは「ヨーシいい子だ。父ちゃんと母ちゃんを大事にするんだぞ」とニコニコ顔で答え、席を離れて事務所を出ていった。
「ボクよかったね社長にチョコ貰えて。落とさないように自転車に縛ってあげるからね」
事務員のお姉さんはチョコレートの箱を茶紙に包むと、荷をおろして事務所脇に置いてある私の自転車まで私を連れて行くと、慣れた手つきで箱を荷台に括りつけてくれた。
「ハイッこれでよし。大丈夫だと思うけれどあんまり揺らさないように乗ってね。割れても味は同じだけど、割れてない方がいいもんね」
銀紙を剥す前に中身が割れていたチョコレートを貰った時、物凄く損をした気になった事のある私は、絶対に割るものかと堅く決意した。
「なんだもう積んじゃったのか。待ってろこれも一緒に持って行け」
おじさんがミカン箱を一箱ぶら下げてやって来ると、さっきお姉さんが縛ったチョコレートの箱を解いて、ミカン箱と合わせて縛り直した。
「よし、これを母ちゃんに持ってけ。チョコはお前のだけど、このミカンはお母ちゃんに渡すんだぞ」
私は「ハイ」と返事をしながら思わずミカン箱を撫でていた。
おじさんは私がミカンを貰ったのが嬉しくて箱を撫でていると勘違いをしたのか、「ワハハハッ」と笑いながら私の頭を撫でた。
本当の事を言うと、私はミカン箱とチョコレートの箱を一緒に積んだので、もしかしてチョコレートが割れてしまうのではないかと、それが心配だったのだ。
それにもうひとつ、帰りは空荷でいいと思っていたのに、結局また荷を運ばなくてはならなくなったのが残念だった。
「ボク、みんなが帰れるようになるまで中にいなさい」
お姉さんが私を迎えに来たので、荷をつけたままの自転車をそのままにしておくのが少し心配だったが、再び事務所に戻ると、さっき座っていたテーブルの上には、またココアが湯気を立てていた。
私は(この家は何てすごいんだろう)と驚きながら、「これいいんですか」とお姉さんに聞いた。
「どうぞ、ボクのために入れたんだから遠慮なく飲んでね」と、お姉さんはニコニコしながら返事をした。
私は喜び勇んで二杯目のココアにとびつくと、フウフウ息を吹きかけながら飲んだ。
飲みながら(ココアの味とチョコの味は似ているな)と思ったので、それをお姉さんに話すと、お姉さんはケタケタ笑いながら、「何だ知らなかったの。ココアもチョコも同じものよ」と教えてくれた。http://www.atelierhakubi.com/
米軍基地がある土地柄なのか、チョコレートを箱ごと置いてあるなんて、足利ではお菓子屋でもない限りあり得ない話だったから、両手でさえズッシリと重い箱を受け取った時には、まるで世界中の宝物を一人占めしたような気分になった。
いくら抑えようとしても勝手に笑ってしまう顔をおじさんに向けて、「ありがとうございます。みんなで分けます」と、やっとの事で礼を言うと、おじさんは「ヨーシいい子だ。父ちゃんと母ちゃんを大事にするんだぞ」とニコニコ顔で答え、席を離れて事務所を出ていった。
「ボクよかったね社長にチョコ貰えて。落とさないように自転車に縛ってあげるからね」
事務員のお姉さんはチョコレートの箱を茶紙に包むと、荷をおろして事務所脇に置いてある私の自転車まで私を連れて行くと、慣れた手つきで箱を荷台に括りつけてくれた。
「ハイッこれでよし。大丈夫だと思うけれどあんまり揺らさないように乗ってね。割れても味は同じだけど、割れてない方がいいもんね」
銀紙を剥す前に中身が割れていたチョコレートを貰った時、物凄く損をした気になった事のある私は、絶対に割るものかと堅く決意した。
「なんだもう積んじゃったのか。待ってろこれも一緒に持って行け」
おじさんがミカン箱を一箱ぶら下げてやって来ると、さっきお姉さんが縛ったチョコレートの箱を解いて、ミカン箱と合わせて縛り直した。
「よし、これを母ちゃんに持ってけ。チョコはお前のだけど、このミカンはお母ちゃんに渡すんだぞ」
私は「ハイ」と返事をしながら思わずミカン箱を撫でていた。
おじさんは私がミカンを貰ったのが嬉しくて箱を撫でていると勘違いをしたのか、「ワハハハッ」と笑いながら私の頭を撫でた。
本当の事を言うと、私はミカン箱とチョコレートの箱を一緒に積んだので、もしかしてチョコレートが割れてしまうのではないかと、それが心配だったのだ。
それにもうひとつ、帰りは空荷でいいと思っていたのに、結局また荷を運ばなくてはならなくなったのが残念だった。
「ボク、みんなが帰れるようになるまで中にいなさい」
お姉さんが私を迎えに来たので、荷をつけたままの自転車をそのままにしておくのが少し心配だったが、再び事務所に戻ると、さっき座っていたテーブルの上には、またココアが湯気を立てていた。
私は(この家は何てすごいんだろう)と驚きながら、「これいいんですか」とお姉さんに聞いた。
「どうぞ、ボクのために入れたんだから遠慮なく飲んでね」と、お姉さんはニコニコしながら返事をした。
私は喜び勇んで二杯目のココアにとびつくと、フウフウ息を吹きかけながら飲んだ。
飲みながら(ココアの味とチョコの味は似ているな)と思ったので、それをお姉さんに話すと、お姉さんはケタケタ笑いながら、「何だ知らなかったの。ココアもチョコも同じものよ」と教えてくれた。http://www.atelierhakubi.com/