アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161203
【晴】《2日の続き》
自転車屋から少し走って部落を抜けると、私以外の三人は前照灯を点灯した。
発電機で点灯するとペダルが重くなるので、三人共ハンドルの下の金具についている箱型の懐中電燈を灯したのだが、私の自転車にはそんなものはついていないので、一番うしろを走っていれば点けなくても良いだろうという事になったのだ。
私は少し不満だったけれど、おとなしく言う通りに無灯火で走らせたところ、100mも走らない内に危なくて運転できず、自転車を降りると、「ヒロやん危なくて乗れないから電燈つけて走るよ」と声を掛け、急いで発電機を倒して自転車に飛び乗った。
ほんの数秒の事だったが、三人の自転車は闇の中にとけ込んでしまい、ユラユラと揺れる三本の光の帯だけが、何とか視野にとらえる事が出来た。
私は置いて行かれそうな気がして、足が物凄くだるくなって、頭から血の気が引いて行くほどの恐怖に、思わず「ヒロやーん」と大声で叫んでしまった。
ヒロやんは今度こそ転ばないように注意深く自転車を止めると、両足をふんばって荷を直立させた状態を保ちながら、「どしたケガしたか、ひっくりけったか」と心配そうに問いただした。
「ウウンそうじゃないけど、置いて行かれるかと思って…」と答え、そのあと何とも言えない恥かしさで顔がカーッと熱くなってしまった。
「何だおどかすない。大丈夫置いてなんか行きやしねえよ」
そして少し前で自転車を止めている二人に、「オオイ、何でもねえよ、大丈夫だから行ってくんな」と声を掛けると、「それじゃ少しゆっくり行ってやるから離れずについて来いよ」と言って、再び自転車のペダルを踏んだ。
私は自分が恐いというより、ヒロやんやヨッさんやハルさんに心配をかけたくない一心で、前を行くヒロやんの自転車のすぐうしろを、懸命について行った。
もう前照灯の当る所以外は、真っ暗闇になっていた。http://www.atelierhakubi.com/
自転車屋から少し走って部落を抜けると、私以外の三人は前照灯を点灯した。
発電機で点灯するとペダルが重くなるので、三人共ハンドルの下の金具についている箱型の懐中電燈を灯したのだが、私の自転車にはそんなものはついていないので、一番うしろを走っていれば点けなくても良いだろうという事になったのだ。
私は少し不満だったけれど、おとなしく言う通りに無灯火で走らせたところ、100mも走らない内に危なくて運転できず、自転車を降りると、「ヒロやん危なくて乗れないから電燈つけて走るよ」と声を掛け、急いで発電機を倒して自転車に飛び乗った。
ほんの数秒の事だったが、三人の自転車は闇の中にとけ込んでしまい、ユラユラと揺れる三本の光の帯だけが、何とか視野にとらえる事が出来た。
私は置いて行かれそうな気がして、足が物凄くだるくなって、頭から血の気が引いて行くほどの恐怖に、思わず「ヒロやーん」と大声で叫んでしまった。
ヒロやんは今度こそ転ばないように注意深く自転車を止めると、両足をふんばって荷を直立させた状態を保ちながら、「どしたケガしたか、ひっくりけったか」と心配そうに問いただした。
「ウウンそうじゃないけど、置いて行かれるかと思って…」と答え、そのあと何とも言えない恥かしさで顔がカーッと熱くなってしまった。
「何だおどかすない。大丈夫置いてなんか行きやしねえよ」
そして少し前で自転車を止めている二人に、「オオイ、何でもねえよ、大丈夫だから行ってくんな」と声を掛けると、「それじゃ少しゆっくり行ってやるから離れずについて来いよ」と言って、再び自転車のペダルを踏んだ。
私は自分が恐いというより、ヒロやんやヨッさんやハルさんに心配をかけたくない一心で、前を行くヒロやんの自転車のすぐうしろを、懸命について行った。
もう前照灯の当る所以外は、真っ暗闇になっていた。http://www.atelierhakubi.com/