アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161119
【雨】
木枯しが吹き始めると、元町の何軒かの店で焼きいもを売り始める。
栄町の渡辺は輪切りのイモを大きな平たい鉄ナベを使って焼くのだが、ふりかかったゴマと塩がイモの甘さをひき立て、ポクポクとした舌触りと合わさって思わず唸ってしまう程の美味しさだった。
値段は10円で新聞紙の袋いっぱい、ちょうど5枚位の枚数だったから、夕飯前の小腹を2~3人で静めるにはちょうど良い量だったと思う。
渡辺は夜の9時近くまで店を開けていたので、夜来の客のもてなしにと、よく使いに出された。
薬師堂の近くにある外燈の下を走り抜けて渡辺の店の中に飛び込むと、土間のかまどにはワラがたかれて、ナベの上の大きな蓋の隙間から、立ち上る甘くて暖かい湯気が、家中に漂っていた。
100円の焼きいもは、子供の両手にもあまる重さと、熱い位のぬくもりを伝えて、家までの道程を楽しませてくれた。
同じ焼きいもでも、つぼ焼きは少し値段が高く、近くでは7丁目か西宮まで行かなければならない上に、食べる時に皮をむくのがなかなか大変だったから、子供にはあまり人気がなかったが、大きなトックリのような焼きつぼと、コークスの赤々と燃える色が楽しくて、別に買う訳でもないのに、よく店のオバさんの話し相手になっていた。
ポケットに少し小遣いが残っている時には、帰り際に一本買ってカイロ代りに懐に入れて店を出たが、イモのぬくもりは意外に長持ちして、家に着いてもまだ暖かかった。http://www.atelierhakubi.com/
木枯しが吹き始めると、元町の何軒かの店で焼きいもを売り始める。
栄町の渡辺は輪切りのイモを大きな平たい鉄ナベを使って焼くのだが、ふりかかったゴマと塩がイモの甘さをひき立て、ポクポクとした舌触りと合わさって思わず唸ってしまう程の美味しさだった。
値段は10円で新聞紙の袋いっぱい、ちょうど5枚位の枚数だったから、夕飯前の小腹を2~3人で静めるにはちょうど良い量だったと思う。
渡辺は夜の9時近くまで店を開けていたので、夜来の客のもてなしにと、よく使いに出された。
薬師堂の近くにある外燈の下を走り抜けて渡辺の店の中に飛び込むと、土間のかまどにはワラがたかれて、ナベの上の大きな蓋の隙間から、立ち上る甘くて暖かい湯気が、家中に漂っていた。
100円の焼きいもは、子供の両手にもあまる重さと、熱い位のぬくもりを伝えて、家までの道程を楽しませてくれた。
同じ焼きいもでも、つぼ焼きは少し値段が高く、近くでは7丁目か西宮まで行かなければならない上に、食べる時に皮をむくのがなかなか大変だったから、子供にはあまり人気がなかったが、大きなトックリのような焼きつぼと、コークスの赤々と燃える色が楽しくて、別に買う訳でもないのに、よく店のオバさんの話し相手になっていた。
ポケットに少し小遣いが残っている時には、帰り際に一本買ってカイロ代りに懐に入れて店を出たが、イモのぬくもりは意外に長持ちして、家に着いてもまだ暖かかった。http://www.atelierhakubi.com/