アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161125 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161125

 【晴】
 日曜日を利用して弓引場の物置を壊す仕事に、子供会が参加した。

 弓引場は八雲神社の境内だったから、宮司の桜木先生の長男で、子供会のリーダーのひろきさんが、現場の采配をふるっての作業だった。

 子供とはいえ、何10人の手にかかれば、半分朽ちかかった物置など物の数時間で解体する事が出来たのだが、私は作業中に金づちの柄を折ってしまった。
ひろきさんはそのまま返してくれればいいと言ってくれたが、私の脳裏には鬼より怖い桜木先生の顔がチラついて、とても柄が折れたままの金づちを渡す事が出来ず、無理矢理預って家に持ち帰った。

 その夜は心配のあまり食欲もなく、床に就いてもなかなか寝つかれなかった。

 翌朝少し早目に起きて家を出ると、途中で角丸のオジさんの所に寄った。
角丸のオジさんの家は建具屋で、表通りに間口2間ほどを開けて仕事場が見えていたので、私はよく店先に腰をかけて道草を食ったものだった。

「オッどした、こんな朝早くから」

「ウン、オジさんこの金づちの柄10円で直してくれるかな」

「どれ見せてみろ。学校の帰りに寄りな。直しておくから」

 私はそれを聞くと芯からホッとして学校に急ぎ、授業が終わると角丸の店まで駆けて行った。

 金づちの柄は見事に新しくすげ代って、何だかこのまま返すのが惜しい程の出来だった。http://www.atelierhakubi.com/