アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161130
【晴】《29日の続き》
基地が近くにあるので車の通りが激しいのだろう。
轍の所の砂利が道路の端に押しやられて盛り上がった所に、ヒロやんは頭から突っ込むように横倒しになった。
「痛えっ、肘がまさか痛えよ。膝が挟まって動けねよ」
「このデレスケ野郎が。またひっくりげえりやがった。いったいどうしたってんだ」
「分かんねえよ、いきなりハンドル取られてよ。あっという間にひっくりげえっちまったんだよ」
ハルさんが前輪に指を当てて強く押すと、ペコンと潰れるのが私からもよく見えた。
「パンクだな。こんなになる前に気が付かなかったのかよ」
「さっきから少しハンドルが重てえとは思ったけんど、下が砂利だから仕方ねえと思ったんだよ」
「仕様がねえ、とにかくパンク直さねえ事にはどうする事も出来ねえ。どこか自転車屋のある所まで押して行くか」
ハルさんはそう言うと、ヨッさんと二人でヒロやんの自転車を立て直し、ヒロやんを助け出した。
ヒロやんは今度はどこかケガをしたらしく、痛そうに顔をしかめながら腕をさすっていた。
「どれ見せてみろ」
ハルさんがヒロやんの袖をまくって腕を出すと、手首から肘までスリ傷が出来て、そこから少し血がにじんでいた。
「痛え、まさかしみるよ」
ヒロやんがしきりに弱音を吐くと、ハルさんは「こんなの傷の内に入るかよ。絵に描いたようなカスリ傷じゃねえか」と冷たく突き放した。
「ひでえよ。自分が痛え思いをしてねえから、そんな冷てえ事が言えるんだよ。ああ、ハルさんがそんなに冷てえ人とは思わなかったよ」
「ああそうだよ。俺は冷てえ人間だよ。だからオメエをおぶってなんかやんねえからな」
ハルさんは笑いながらヒロやんをからかうと、ヒロやんはムキになってハルさんやヨッさんの人柄を責めた。
ハルさんはそんなヒロやんの言う事など眼中になくて、くどくどと文句を並べるヒロやんに、細引きを使って自転車の荷を背負わせた。
「先に行って自転車屋を見付けておくから、オメエは自転車を転がして後から来いよ」
ハルさんとヨッさんはそう言うと、自転車に乗って走り去って行った。http://www.atelierhakubi.com/
基地が近くにあるので車の通りが激しいのだろう。
轍の所の砂利が道路の端に押しやられて盛り上がった所に、ヒロやんは頭から突っ込むように横倒しになった。
「痛えっ、肘がまさか痛えよ。膝が挟まって動けねよ」
「このデレスケ野郎が。またひっくりげえりやがった。いったいどうしたってんだ」
「分かんねえよ、いきなりハンドル取られてよ。あっという間にひっくりげえっちまったんだよ」
ハルさんが前輪に指を当てて強く押すと、ペコンと潰れるのが私からもよく見えた。
「パンクだな。こんなになる前に気が付かなかったのかよ」
「さっきから少しハンドルが重てえとは思ったけんど、下が砂利だから仕方ねえと思ったんだよ」
「仕様がねえ、とにかくパンク直さねえ事にはどうする事も出来ねえ。どこか自転車屋のある所まで押して行くか」
ハルさんはそう言うと、ヨッさんと二人でヒロやんの自転車を立て直し、ヒロやんを助け出した。
ヒロやんは今度はどこかケガをしたらしく、痛そうに顔をしかめながら腕をさすっていた。
「どれ見せてみろ」
ハルさんがヒロやんの袖をまくって腕を出すと、手首から肘までスリ傷が出来て、そこから少し血がにじんでいた。
「痛え、まさかしみるよ」
ヒロやんがしきりに弱音を吐くと、ハルさんは「こんなの傷の内に入るかよ。絵に描いたようなカスリ傷じゃねえか」と冷たく突き放した。
「ひでえよ。自分が痛え思いをしてねえから、そんな冷てえ事が言えるんだよ。ああ、ハルさんがそんなに冷てえ人とは思わなかったよ」
「ああそうだよ。俺は冷てえ人間だよ。だからオメエをおぶってなんかやんねえからな」
ハルさんは笑いながらヒロやんをからかうと、ヒロやんはムキになってハルさんやヨッさんの人柄を責めた。
ハルさんはそんなヒロやんの言う事など眼中になくて、くどくどと文句を並べるヒロやんに、細引きを使って自転車の荷を背負わせた。
「先に行って自転車屋を見付けておくから、オメエは自転車を転がして後から来いよ」
ハルさんとヨッさんはそう言うと、自転車に乗って走り去って行った。http://www.atelierhakubi.com/