国税庁の確定申告書作成コーナーを使って、申告書を作成して、領収書などど一緒に郵送し、無事申告、後日、還付をうけることができました。


この確定申告書作成コーナーがもっと使いやすくなったら、国民レベルで、相当の時間が節約できます。

どう使えばよいかがわかった今は、注意すべきポイントと流れもわかったので、来年は簡単に使えると思いますが、最初は、何を選んだらよいのか、どこまで進んだのか、あと、何が残っているのかわからず、医療費内訳の作成確認をふくめ、まる一日以上かかりました。


古い本で紹介されている他の国のデータですが、「平均的なオーストラリア人は、申告書の記入に11時間かけ、62%はその仕事を手伝ってもらう代理人を頼まなければならない」(「ユーザエンジニアリング原論」(ヤコブ・ニールセン著)。

さて、日本の場合は、どうなのでしょうか。

仮にはじめてこれを使う100万人が1時間ずつ時間を短縮できたら、100万時間の節約、最後まで進める人も増えるのではないでしょうか。


難しいのは、ひとつは、確定申告の内容そのものがわかっていないためです。確定申告書の様式のどれを選択すべきまずはっきりわからない、次に、確定申告書の各欄の意味がわからない、収入と所得の違い、計算式がわからない、何が医療費控除の対象にできるか(インフルエンザの予防注射は? 人間ドックは? 交通費・ガソリン代は?)などなど。

しかし、システム上の問題もあります。

いろんな申告に対応できるようになっているせいか、利用の多い機能・入力項目も利用の少ない機能・項目も等しく扱われて、目に飛び込んできます。コントラスト・めりはりがありません。

単純な申告でも、多くの無関係なことを自分で選り分けて進まなければならないのは大変です。よくおこなわれる申告パターン、利用状況を優先することはできないのでしょうか。たとえば、サラリーマンで医療費控除だけ申請する人も多いと思いますが。


パンくずリストと呼ばれる位置表示が提供されていますが、画面タイトルと違っていたり、次に進むと思ったら第二階層に戻ったり。 


せっかく確定申告書が作成できるようにシステムが作られていて、使い方・補足説明も提供できるようになっているのに。これをもっと使いやすく、改善する意志と技術を持っている人達はいないのでしょうか(確定申告書の電子申告 e-Taxには、システム開発には、500億円かかったという話を聞いてことがありますが)。国家的な取り組みをされていて、専門家も多くいるはずですが、これが国力。


さて、この電子申告については、調査結果、改善報告もされています。

(1)楽天リサーチの調査レポート 2010年

http://research.rakuten.co.jp/report/20100222/


調査エリア  :全国
調査対象者  :20~69歳男女 確定申告経験者または今年確定申告をする人
回収サンプル数:1,000サンプル(性別×年代均等割付 各セル100サンプル)
調査期間   :2010年1月21日
調査実施機関 :楽天リサーチ株式会社


ア.今年の確定申告の主な方法

税務署または還付センターなどで作成・提出・・・・・・41.9%

「e-Tax(国税電子申告・納税システム)で申告」・・・・・・15.8%

「国税庁のホームページ(確定申告等作成コーナー)で申告書を作成し、税務署にて提出」する人

  ・・・・・・11.5%

「国税庁のホームページ(確定申告等作成コーナー)で申告書を作成し、郵送にて提出」する人

  ・・・・・・10.8%

「自宅で申告書を作成し、税務署にて提出」する人

  ・・・・・・9.3%

「自宅で申告書を作成し、郵送にて提出」する人

  ・・・・・・6.1%

そのほかの回答 ・・・・・・14.0%


=>38.1%が国税庁のシステムを利用


イ.「国税庁のホームページ」で申告書を作成・提出する人以外(533人)にたいし、

国税庁のホームページで申告書を作成できることを知っているかどうかの質問

「知っている」 ・・・・・・83.7%

「知らない」・・・・・・16.3%



=>

知っていても使わない人が多い


ウ.確定申告書作成の難易度に関する質問の回答(全員に質問) 

「難しい」 ......・・・・・・18.7%

「どちらかといえば難しい」 ・・・・・・32.3%

「実際に作成してみると、それほど難しくはない」・・・・・・39.2%

「どちらかといえば簡単」・・・・・・5.3%

「簡単」・・・・・・4.5%


=>

難しいと感じている人が51%

この人達が、税務署・還付センターで順番を待って申告書を作成して提出している?

申告の内容についての問い合わせは最寄りの税務所に電話でもできるのですが、申告書作成ページに税務内容の問い合わせ先の番号が出ていて、住所名前をいわなくても聞ければ簡単になるように思えます。 地元の税務署に電話して住所・名前をいって聞くのでは、下手な質問もできません?

「実際に作成してみると、それほど難しくはない」が39.2%なのは、最初は難しかったということではないかと思います。


エ.今年の確定申告の理由

「医療費控除」・・・・・・34.7%

「自営業・自由業など職種上必須のため」・・・・・・30.1%

「年金生活者のため」・・・・・・13.1%

「副業収入があるため」・・・・・・12.4%

「株や投資信託の売買」・・・・・・12.4%

そのほかの回答13種の合計・・・・・・44.5%


=>

一度わかってみれば単純な申告内容も多そうです。



(2)電子政府ユーザビリティ基本調査報告書 1999年4月
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/guide/kaisai_h20/dai2/sankousiryou2.pdf


申告書の作成についての専門家などによるチェック、一般利用者による実際の操作テスト(ユーザビリティテスト)の結果が報告されています。

確定申告書の作成では、かならずしもスムーズにいかないところがあったけれど、一般利用者平均で、14分21秒で、全員、独力で作成完了。

現状は、それほど悪くない。今後もユーザビリティの向上につとめていくとの結論です。

=>

どんな申告書を作成してテストしたのかは不明です。14分強で作れるほど簡単なら、もっと使われてよいと思うのですが。

もっと利用状況・実態に目を向けてください。



この公表に先立つ委員会の議事録がありました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/guide/usability/kaisai_h20/dai5/5gijiyousi.pdf

「電子政府ユーザビリティ調査(第2次調査(国税・登記分野)結果報告(概要版)」についてあれこれ。

限られた予算で使い勝手を改善しなければならないため、利用者がつまずいた原因は、システム、利用者のパソコン、業務内容のどこにあるのか、改善のためには、具体的にどうすればよいのかを調査する必要がある。」

=>

問題が少ない、うまくいっているといったら、予算もかけられません。

問題の多いことを認めた上で、大きな効果を期待してもっと予算をかけてはどうでしょう。