マリはベレー帽が大好きだ。

 

どんな帽子も似合わなかったけど、唯一、ベレー帽はマリの頭の形に合った。

 

マリの通う大学は田舎にあるため、ヒールに高級バッグを身につける格好は合わず、みんなスニーカーにリュックサックという格好で通った。

 

そのため、おしゃれな帽子をかぶってくる人はほとんどいない。

 

マリは躊躇したが、思いきってお気に入りのベレー帽をかぶっていった。

 

ドキドキして教室まで移動したものの、誰にも何も言われなかった。

 

クラスのみんなとまだそこまで仲良くなっていなかったのだ。

 

他のクラスにいる仲の良い人と学校すれ違うことももなく、トボトボ歩いていたとき、ふと視線を感じた。

 

彼だ。

 

彼が優しい眼差しでこちらをみていた。

 

話したこともない、名前も知らない。

 

彼が気付いてくれただけで、勇気を出してベレー帽をかぶっていって良かった。

 

マリの心はすっかりみたされた。