久し振りに、分かりやすい悪夢を見た。
今日はなんもうまくいかねえな、っていう日があるじゃないか。
朝から盛大にキレられ、
あるはずのもんは入ってないし、
とんでもないミスをやらかした挙句、
仕事が終わらずに会社に泊まる羽目になり。
そんなマイナス方向の色々があったとしても、
まあ、そういう日もあるよな。
っていう程度にあしらえるくらいには、大人なので。
その代わりに、ミニサイズのワインを1本空けて、
久々のワインだったせいか、久々に気分が悪くなり。
だらだらして、そのまま寝ていたら、
夢を見た。
雪山だ。
まだ小学生くらいの子供が10人ほどいた。
その他にも、どういう集まりなのかよくわからない人々がいた。
それらの人々と一緒に、雪山を登ろうとしている。
ちょうど、雪山の麓に繋がる建物の狭い出口から出て、
左側にある山肌を見上げたところ。
おいおい、と自分は内心思っている。
自分はこの山に登ったことがあるらしかった。
だから、この山のレベルがどのくらいかも知っている。
確かに、子供でも登れなくはない。
けれど、かなりの注意が必要だ。
足を滑らせたら終わり、みたいなところもある。
天気は良いが、だからこそ足元が不安になる。
現に雪は少し溶けて固まり、滑りやすくなっていた。
そもそも、出口から左に少し上に登ったところある、
ちょっと開けた場所へ行くまでが既に難関だ。
ロープも何もない、雪の斜面を登っていく必要がある。
そして右側はコンクリートの絶壁になっている。
足を滑らせたら、の典型例だ。
確かに、そこも気をつけて登れば、なんてことはない斜面なのだ。
既に子供達は上の開けた場所まで進んでいるようだった。
自分は最後尾の方にいるようで、外国人の親子3人が最初の斜面を登っている。
両親が先に登り、下の子供に手を伸ばしている。
中高生くらいだろうか。
もう大丈夫、と言うので、親が手を離した。
子供は勢いをつけて登ろうとして、足を滑らせた。
、
誰も声を上げなかった。
息を呑んで、前の人達を押し除けて、ただ走った。
思わず腕を伸ばして体勢を崩した母親を、近くの父親が引き留めた。
一瞬のことなのに、やたらとゆっくり見えた。
転んだ後、うつ伏せの体勢そのままで、子供がきれいに斜面を滑り落ちる。
出口から少し伸びたコンクリートの道の端まできて、
成す術なくずるりと足から落ちた。
咄嗟に掴んだであろうコンクリートの角は凍っていて、
彼の体をその場に留めたのは、ほんの一瞬に過ぎなかった。
そんな抵抗はそもそも無かったとでも言うように、
まるで斜面に流れる水のように、彼は視界から消えた。
ああ、
この下は、雪があるのだったか。
水があるのだったか。
それとも、コンクリートだったか。
思い出せない。
けれど、音ですぐに判るのだろう。
ややあって、その答えは返ってきた。
落ちた先は見なかった。