舗装された幅の広い山道を、自転車で滑るように下りていく。

風が心地よい。車は見当たらなかった。

途中で道の分岐があり、進行方向とは別の道の先をちらりと見た。

何かが地面にある。割と大きい。

何だろう。少し遠くて、よく見えなかった。

けれども、何だか表現し難い気味の悪さを感じた。

 

もしも、というのが頭を過って、そちらへ自転車を向けた。

ちょうど人間の大きさくらいに見えたからだ。

近付くにつれて、段々はっきりと見えてきた。

人が地面にうつ伏せに倒れている。恐らく男性だ。

その近くに、誰かもう一人が座り込んでいる。

男性の連れだろうか。たまたま通りがかった人が、助けようとしているのか。

 

違う。

随分近付いたところで、スマホを取り出した。

心臓が急激に高鳴った。

それと相反して、頭からざっと血の気が引いた。

果たして正しい番号を押せていたのだろうか。

それすらも判断できないまま、ただ叫んでいた。

 

「119番!!119番!!!」

 

遠目に見た時から感じていた、気味の悪さ。

それはきっと、そのサイズから人間だろうと予想されること。

そしてそれが、全体的に赤やピンク色がかっていたこと。

轢死、ではない。恐らく。

倒れている男性の横に座り込んでいた人は、助けようとしていたのではない。

倒れている人を、食べていた。

 

精一杯の強がりと、牽制の意味合いで、スマホに叫び続けた。

人を呼んでいるぞ、と。

けれども、その程度では恐怖心を抑えることなどとても出来なかった。

あの恐ろしい光景を見てしまった。

自転車に乗ったまま、必死でその場から逃げ出した。

怖かった。ただただ怖かった。

ほんの一瞬、横を通り過ぎただけなのに。

あいつに追われる、という恐怖心が身体中を覆い尽くした。

 

自転車すらも遅く感じられて、気が付いた時には遥か下の川へ身を投げ出していた。

相当高いところから落ちたものの、深さがあったお陰か問題無かった。

追ってくる、あいつが追ってくる、という恐怖に駆り立てられて、

無我夢中で対岸へ泳ぎ、岸へ上がった後も必死で走った。

 

なぜだか判るのだ。

あいつが、山の上からじっと目を凝らしているのが。

こちらが潜んだ物陰から姿を見せるのを、じっと待っている。

背中がぞくりと粟立つ。

逃げなければ。

とにかく、誰か、人のいるところへ。

誰か、誰か…

 

 

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無事に誰かがいるところまで逃げて、たぶん助かった…んじゃないかな

ひっさしぶりに激怖悪夢見て吃驚だわ

ちなみに、たぶん500mくらいの高さからでっっかい川に落ちた

絶対死ぬだろと思ったけど、まあ、夢だかんね。