子供がこれだよ、と本を開いてみせる。
その本には、表紙も裏表紙にも何も書かれていない。
何の本だろう。
するとその子は最後のページを開いた。
やっぱりそのページにも何も書かれていなかったけれど、
ページの下に何やら黒で塗りつぶされた部分がある。
「なかなかうまくいかないんだ」
そう言って、子供は何度かそのページを開いたり閉じたりする。
すると、不意にその黒い部分が光り始めた。
次の瞬間、視界は眩いばかりの光で埋め尽くされた。
感じたのは、暖かさ。
白だけじゃなく、黄色やオレンジの、暖色系の色が何色も飛び交っていて、
眩しさと同時に、温もりと柔らかさを感じた。
やがてそれらの色も白に変わり、空間全てが白に塗りつぶされた後。
暗闇から急に明るい所へ出た時のように、少しずつ白の霧が晴れていった。
眩しさに目が慣れて、視界が開けていく。
そこは砂浜だった。
白い陽光に照らされて、砂浜全体が淡く光っているように見える。
海は見えないけど、遠く潮騒が聞こえる。
なんだか幻想的な場所だった。
姿は無いのに、あの子供の声がした。
「そこは、僕らの秘密の場所だよ。19の扉を探してね」
扉なんてどこにあるだろう、と不思議に思いつつ、
近くにあった朽ちかけた石碑に触れてみた。
すると、それは一瞬虹色に輝いて、扉になった。