ついさっき上げた日記に書いた夢の話。

正直なところ、この夢オチを書きたい訳ではないの。

いや確かに、印象に残る夢ではあったよ。

割と最近知り合った人の、兄夫婦が亡くなったというので、墓参りへ行く夢。

 

ぶっちゃけ、その知人とは知り合ったばかりだし、接点も薄くて、

当然、兄がいるのかどうかなんて知らない。

自分の夢の中で、勝手にその人は地位が高い家の生まれになっていて、

彼のお兄さんは周囲から将来を期待されていた善き人で、

自分も期待をしていた一人だった、ていうのが夢の設定だった。

 

そして、墓に線香をあげる自分の横に、一人。

何でお前がいるんだ、の一言も出ないくらいに、自然とそいつは横にいて。

自分が火を持っていないことを知っているかのように、

ごくごく自然にライターの火を差し出してきた。

 

何でお前がいるんだ。

 

それを思うのは、いつも目が覚めてから。

 

無事に線香をあげて、踵を返して。

でも、何となく後ろ髪引かれるようで、離れ難くて。

結局また墓の前へ戻ってきて、地面に膝をついて、しくしくと泣き出した。

ああ、どうして、死んでしまったのですか。

これから、皆を導くべきあなた方が、なぜ死んでしまったのですか。

 

人前で泣くのは嫌いなんだ。

だから、こんな姿は、誰にも見られたくないんだ。

こんな情けない姿を見せるのは、何の躊躇いもなく涙を流せるのは、

お前だからなんだよ。

 

なあ、頼むから

 

あいつは自分がひとしきり泣いて、のっそりと立ち上がるまで、

何も言わずに、道の少し先で待っていた。

 

この無言の心地よさを、失ったのはいつだったか。

 

 

目が覚めてから、いつも願うのだ。

 

 

頼むから、もう出て来ないでくれよ

 

 

知ってる、これは間違いなく後悔なのだと。

あいつはいつだって、自然と隣にいて、さり気なく手を添えてくれるのだ。

夢の中で。

 

もう、夢の中でしか会えないから。

だから諦め悪く、自分は何度も夢に見るのだ。

それで、見たら見たで、「もう出て来るな」と願う。矛盾している、大概に。

 

忘れられるなら、忘れたいよ。

そう願っても、自分の根っこに近い辺りにあるものが、それを否定する。

あいつの思い出を大事に大事に仕舞っておきたいと、忘却することを許さない。

 

深部の自分も、表面の自分も、「またいつか」なんては思っていない。

それを前提とした上で、忘れたくない自分と忘れたい自分が同居しているから、

きっと、あいつはこの先もずっと、夢に出て来るんだろう。

 

 

それは、とてもやさしくてあたたかな、地獄のようだ。