自転車に乗って、また無茶なサイクリングに出掛けようとしている。
地元の慣れた道を行き、交差点で止まった。
車を運転している癖で、車用の信号機を見たからだ。
横断歩道を直進する方が青だった。
そちらが赤になったから進もうと思ったら、横断歩道の信号機に何も灯っていない。
ので一瞬躊躇したが、車用の信号機は赤になっているし、そのまま渡った。
向かい側の横断歩道の信号機を見たら青になっていたから、少し安心した。

しばらく自転車をこいでいると、いつからか湖畔の一本道を進んでいた。
進行方向の左手に、大きな湖がある。
既に陽は暮れて辺りは暗く、湖は静まり返っている。
道は湖よりも小高い位置にあり、よく見渡せた。
湖畔に大きなロッジがあり、入浴もできる施設らしい。
じゃあ帰りはあそこに寄って汗を流そうかな、と思った。
上の着替えは持ってきてあるんだ。

ロッジを通り過ぎると、また左手に柔らかい光が見えた。
道に沿ってテーブルとイスの組み合わせが並べられており、喫茶なのだろうなと予想できた。
しかし客は一人もいない。
こぢんまりした店舗を一度振り返ると、厨房らしき所で、柔らかい光の下で中年の夫婦らしい二人が並んで支度をしているのが見えた。
まだ準備中なのかもしれない。
いい雰囲気だな、と思った。
今度友人を誘おうか、とも思った。

道は緩やかにカーブし、やけに周囲が明るくなった。
椅子が並べられ、裕福そうな人達が楽器を持ち寄って談笑している。
ピッコロを吹いている人がいたが、ちょうどブレーキの音が喧しく響いてしまったので、嫌な顔をされた。
中学生くらいの制服の少女は、譜面台の前に立ってヴァイオリンを練習している。
譜面のタイトルを覗き見ると、『ディツ…ディ……お菓子の………』とあった。(…の部分は思い出せない)
昔、自分も弾いていた曲だと思う。初心者向けの練習曲だったと記憶している。
大分速度を落として階段も危なっかしく降りて、美しい音楽が奏でられる場所を抜けた。

また周囲は闇に戻ったが、いつの間にか正面の空から明るくなり始めている。
いつも聞いているめざましテレビの、お天気お姉さんの声がどこからともなく聞こえてくる。
『今日も35℃を超える猛暑日になりそうです。熱中症にお気をつけください…』



そこで目が覚めた。
いつも通り、めざましテレビがついていた。