そいつは何か言っていたが、イヤホンから流れる音楽に被さって殆ど聞こえなかった。
故意にそうしているのだ。イヤホンを外す気は毛頭無い。
「あんた達とはもう口をきかないと決めたんだ。あんたの声なんか聞こえやしない。話すことなんて何も無い」
憎しみを込めて睨み付けてから、その場を離れた。すると、外へ出る前に一人の女性とばったり鉢合わせた。
女性、と言うよりは少女、の方が正しい。
夢の中で久し振りに見た顔は、もう何年前になるのか分からない、記憶の中のままだった。
彼女は何も知らない様子で、昔のように声をかけてきた。
イヤホンの音楽がそれを掻き消す。
「ごめんね」
彼女の目を見ないまま、消え入りそうな声で自分は謝罪した。
彼女が不思議そうな顔をしたのが判った。そのまま何も言わず、足早に外へ出た。
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捨ててきた人間関係を、夢は偶にこうして思い出させてくる。
血の繋がりでさえ捨ててきた。
いや、捨てられたらと願った。
そうしたら、彼女に対してこんな思いを抱かずに済むのにな。
故意にそうしているのだ。イヤホンを外す気は毛頭無い。
「あんた達とはもう口をきかないと決めたんだ。あんたの声なんか聞こえやしない。話すことなんて何も無い」
憎しみを込めて睨み付けてから、その場を離れた。すると、外へ出る前に一人の女性とばったり鉢合わせた。
女性、と言うよりは少女、の方が正しい。
夢の中で久し振りに見た顔は、もう何年前になるのか分からない、記憶の中のままだった。
彼女は何も知らない様子で、昔のように声をかけてきた。
イヤホンの音楽がそれを掻き消す。
「ごめんね」
彼女の目を見ないまま、消え入りそうな声で自分は謝罪した。
彼女が不思議そうな顔をしたのが判った。そのまま何も言わず、足早に外へ出た。
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捨ててきた人間関係を、夢は偶にこうして思い出させてくる。
血の繋がりでさえ捨ててきた。
いや、捨てられたらと願った。
そうしたら、彼女に対してこんな思いを抱かずに済むのにな。