夜空に瞬く白いバツ印。

見えない地図の目的地のように、墓地に並ぶ十字架のように。

奇妙な形で輝く星々を眺めている内に、その瞬間はやってきた。


バツ印が歪み、闇へと溶け出し、混ざり合う。

枠の無い黒い窓に、突然白地のカーテンが現れる。

無風の中でゆらゆらと優雅に曲線を描き、見上げるものの目を浚っていく。


オーロラなんて起こる筈も無い、緯度と気象条件。

そこで生まれた奇跡。


雨が降ってきた。


角膜に雨粒が当たって、水滴が目玉の表面を撥ねる。

視界が滲み、白いバツ印が歪んで溶けていく。

その向こうに白いオーロラが見える。


水飛沫で千切れて見える。


お願いだ、もう少し。

もう少しだけ、見ていたいんだ。どうか消えないで。

この手に触れることが出来ないのなら、せめて。


この瞬間を止めて、永遠にしておくれ。



黒い髪と、黒い瞳が白く変わる。

白く長い髪が風に靡いて、大きな白い瞳が瞬きする。


その瞳も浚ってしまうから。

目を閉じて、夢の中でおやすみ。



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大分前の夢オチ。

白いバツ印の星ね。これ確実に、Yラボのある建物内にあるマグネットですな。

白くてバッテンの形してるんですよ。珍しい、というか見たこと無かったのでへぇーと思って、それが印象深くて夢に出てきたんでしょうな。


因みに、オーロラが自分の母校の校庭の上に発生しました。

日本の関東地方にオーロラ、有り得ねぇー。