かなり前にちろっと書いた、カオスだけど妙なリアリティが混ざってる濃い内容の夢オチ。

あまりに脈絡が無いにも関わらず、夢の中だけの世界としては美しい程に完成していた気がしないでもない。夢の中では全て筋が通っていて、そして全てに意味が無い。

何とも豪奢で、虚しい世界でした。


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チャリを漕いでバス停へ向かっている所から、このストーリィは始まる。

しかしバス停までもう一息、という所でバスが行き去ってしまう。


「…チャリで行けと。分かったよ、行くしかねーだろ」


バスの背を睨みながら、取り残された自分は、仕方なく再びチャリンコを駅へと走らせる。

駅へ向かう途中にある大橋を渡り終えると、途端に荒野に出る。粗い路面に手こずりつつ、ハンドルをとられないように注意深く運転していると、前を走る子供の集団に追いついた。

世に言うチャリンコ暴走族、という訳ではなく至って普通の小学生だが、これが横一列に並んでるものだからなかなか抜かすことが出来ない。ちりん、とベルを鳴らすが一向に反応する様子も無い。


躾のなってないクソガキ共め、と胸の内で悪態を吐きながら、それでもある建物に到着した。

100階はありそうな、ずんぐりとした直方体。古典的な巨大ビルだ。壁面にびっしりと窓枠が並んでいる。

慣れた雰囲気で階上へ上がると、友人達が集まっていた。

何やら御祝いムードだ。話を聞いてみると、友人の一人がCDを出したのだという。


「××ちゃんの歌が発売されたんだよ」

「へえ、それはすごいなぁ。おめでとう!」


嬉しさを堪えきれず、Yっしーと無言で握手を交わし、Kっちゃんとハイタッチ。その横で、当の××ちゃんは照れて赤面している。大したものじゃないから、と困ったように謙遜するのも彼女らしい。

何か祝いのものを買おう、と友人達と話している所で、時計に目をやる。

今現在am9:00。まずい、このままだと研究室に遅刻する。

とりあえず研究室に行く、また後で。そう言い残して輪を離れようとすると、引き留める声があった。


「ちょっと教えて欲しいんだけど。Nさんはいくつなの?」


そう尋ねてきたのはC様だ。ええと、Nさん…中学時代の友人の名だ。そう思い出してから、吹き出した。


「いくつも何も、中学時代の友達だよ。自分と同い年だ」


午後にまた連絡する、と言って、今度こそエレベータに乗った。

エレベータにはAさんが同乗していた。2人で他愛ない話をしていると、やがてエレベータがどこかの階で止まる。扉が開いたそこは1フロア丸々ぶち抜いているらしく、ビルのような閉鎖的空間には不釣合いな程に、広々とした空間が3次元に広がっていた。

何らかの技術試験の審査会場であるらしかった。あちこちで技術屋の卵と思しき人間が作業をしている。


フロアを突っ切る形でAさんと2人で歩いていて、何気なく相手を見る。と。

一瞬、目を疑った。


「な、何それ??」

「え?耳と尻尾。カワイイでしょー」


いつの間にか、狐を模したらしい耳と尻尾を装着しているではないか。

あまりのナチュラルさとそして似合いっぷりに両面から動揺していると、Aさんが平然と指摘してきた。


「何驚いてるの、○○だって付けてるじゃん」


ん ? (硬直


思わず頭と尻に手をやりかけて、止めた。確認するのも恐ろしい。

悪夢を振り払うようにさっさとフロアを横切り、先にあるエレベータに飛び乗った。


エレベータで降りると、見慣れたデパートの一角だった。

天井はオレンジ色に輝く照明に覆われ、風景全体が煌きの中に霞んで見える。人々の喧騒が近い。

丁度良い、××ちゃんと先生にチョコでも買って行こうかな、と喧騒の中へと足を向けた。



途端に、背後から悲鳴。

空間が暗転し、建物はがらんどうの廃墟に変わる。一瞬で、喧騒が遠のいた。


続いて聞こえてきたのは、獲物を追い立てる獰猛な唸り声。

その姿を視界に捉えた瞬間に、思い切り地を蹴って走り出した。向かう為ではない、逃げる為だ。

牙を剥いた野犬が、こちらへ一直線に突進してきていた。止まれと言って止まる訳でなし、話せば分かる相手でもない。おまけに、アレは確実に自分を殺しに来ている。そういう目だ。そうに違いない。


逃げつつ、せめてもの抵抗に、と持っていたホッカイロ(貼るタイプ)を投げ付ける。

粘着部分が顔にくっつけば、視界を奪える。2個、3個と投げる内に、漸く顔面に命中した。何故にそんなに貼るタイプを持っていたのかという疑問は、この際脇に置いておく。

犬の足が鈍り、顔からホッカイロを剥がそうと首を激しく左右に振る。

その間に、元デパートの扉から何とか脱出することが出来た。ホッカイロ、万歳。


扉を閉めて息を整えながら、外の世界を振り返る。うわあ、と落胆の意味で深い嘆息が洩れた。

荒野の向こう、地平線の果てから神々しい光が降り注ぐ。その足元には何故かタカアシガニの群れ。もとい、既にこれは道と言った方が正しい。

海の底に居る筈の高級甲殻類が、乾いた地面の上でひっくり返り、キシキシと足を動かしている光景は、どう見ても世界の破滅としか思えない。

カニで出来た一筋の赤い道を、それでも仕方なく歩き出した。

仕方ないから、踏ん付けていった。カニ、すまん。


後ろから付いてくる人影に気付いたのは、どれだけカニの腹を踏ん付けた頃だろうか。

一人の老人が、少し離れて付いて来ていた。同じく、カニの腹を踏ん付けながら。


ああ、貴方もですか。


振り返って世間話でもしようとした矢先、目の前に洞窟らしきものの入り口がぽっかりと現れた。暗がりの奥に据え付けられたエレベータが見える。

何じゃこりゃ、と叫ぶ前に、背後の老人が口を開いた。


「そのエレベータに乗り、降りれば全てが終わる」


あ、いきなりゴール出現ですか。

呆然と突っ立っていると(相変わらず足元でカニがキシキシ鳴いている)、不意に既視感が脳裏を過ぎった。

この情況、見覚えがある。以前にも経験したことがある。

確か、運が悪いとここで…


運が悪い、とか、そういうことを夢の中で考えるんじゃなかった。

だって、夢は常に空想と虚構を形にするものだから。


> Hela君(Lv.4) が 現れた !!


まるで一昔前のゲームような、ビット数の少ない粗い画質でテロップが出る。って、何処にだ。

そんなセルフツッコミをしている間に、悪夢は容赦無く襲い掛かってきた。


なす術無く、敗北。

今度こそ、世界が完全に闇に沈んだ。


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連続夢オチ第3弾。

スゲー、書いてて全く意味が解らない。何なんだこの世界。


実際はもう少し続いて、ゲームオーバー扱いになった自分はヘイポーになってタカアシガニの道を歩き始める所から再スタートし、今度はじいさんが襲ってきて、ゴール入り口にある石柱と壁の間にハマリ、魔法使いに魔法を解いてもらい、何故かその魔法使いが2人居て、何だと思ったら片方が兄貴でうざい言葉を連発され、従妹から「pyruvateについて語りたい。食い付いてくれ!」という内容のメールが届くというオチでした。


うん、全くオチていない。(終了


因みに、Lv.4のHela君はとても強いらしい。Lv.はランダムで、そこは運らしい。