夜と朝の間のような気がする。そんなにおいがする。慣れている。
この何とも形容し難い溜まった空気は、そんな時間帯に感じるものだ。よし、そろそろ起きるとしようか…
時計を見た。
am5:45。
今回は、長針も短針も見誤っていない。
瞬間、飛び起きた。
ていうか、そもそも何で俺寝てたんだっけ。
オレンジ色の弱い光に照らされた室内。昨日着てたランニングとジャージのままの自分。枕元の雑誌と落書き帳。ベッド脇の移動棚に置かれたノーパソはスタンバイ状態。その上には実験のプリント一式と筆箱と計算機。ティッシュ箱の上には電子辞書と眼鏡。棚の隣に放置されたカバンのポケットには、イヤホーンとiPodがぐるぐる巻きになって定期や腕時計や何やらと共に乱雑に突っ込まれている。ベッドの足元の方には実験のグラフ用紙が散乱していて、分厚い参考書もその辺にポイと捨てられたまま。おまけにベッドシーツは敷いてない。
電気は消えていたが、消した記憶が無い。なんてことを気にしてる場合じゃない。
ノーパソを起動させて電気を点けて、違うもうこんな時間なら明るいだろ。うん、雨戸開けたら明るかった。
昨日はどこまでやったんだっけ。ああ、そうそう考察の途中まで。実験Ⅱの途中だったからもういいや、あとは考えずにやったことをつらつらと…
あ、父さんが犬の散歩に行った。最近ちょい遅いぞ。年寄りは早起きになる筈なのに。
母さんも起きた。何で休日もこんな早くから起きてるのだろうか。ああ、年寄りだからか。
兄貴は爆睡。俺より2歳年上とはいえ、流石にまだ若いか。
久々に大量の睡眠をとってスッキリしたのか、異常な程頭が冴えている自分。これがいつもならいいのに…。そ~うだったらいいのにな♪で~もそ~じゃないから…(←ファンタのCM)…自分にちょっと引くわ。
段々と空は明るくなり、タイム・リミットも近付いてくる。イヤ実際のタイム・リミットは明後日だけど。でも今日大学で出力しちまいたいんだよ。紙代インク代がもったいない!高い学費払ってんだからそこんとこ利用しないと。(最低)
大体、何でレポ提出が月曜なんですか先生。実験は火曜なのにィ…!優しい顔して結構鬼だぜセンセ。しかし貴方の笑顔の素敵さと説明の長さには皆が皆頷いてくれますよ。うん。
犬の喧しい声で、父が散歩から帰ってきたのを知る。
母さんがテーブルに皿を並べる音で、朝食の支度ができたことを知る。
周囲の時間は流れてる。止まっているのは、この階にある2つの部屋だけ。
…一向に起きない兄貴。
そしてレポも終わらない。
何?原理が何よ。ラインウィーバーだかミカエリスだか知らんけど、それをどう説明しろと。もう自分はとっくの昔に生物以外ダメ人間で通すことに決めたんですが。生物最高。ビバ生物!なんて、こんなあからさまな現実逃避をしている場合じゃない。
しゃーない、丸写し決定…て、先生このスライド日本語省きすぎじゃないですか。そして参考書は詳しすぎて意味不明じゃないですか。どうしろとおおおおォ
また暫く経って、下から兄貴を呼ぶ声が聞こえた。間抜けな返事が隣の部屋から返る。
オイオイ、大学生にもなって親に起こされるってどうなのよ。イヤ、自分も偶にあるけどさ。
丁度良いからと自分も下に降りて行き、ソッコーでシャワーを浴びて朝飯を台所で立ち食い。メニューはネコまんまと焼き魚とサラダと豆腐×枝豆の味噌汁。闘いに栄養補給は必須なので。
そして再び部屋へ戻り、パソと向き合い参考書と睨めっこ。
大学へ行くまではもう少し時間がある、とりあえず出発10分前までやってよう。
すっかり明るくなった空をちらりと見て、今日も生まれたての世界を感じつつ。
―――さて、今日も1日頑張りますか。
* * *
タイトルは高校時代の、極少数の知人にしか伝わらないネタ(笑)