唐突に。全く唐突に、それは聞こえてきた。
イヤ、予感はあったのかもしれない。ただ、それを意識の奥底の何処かで否定していた。
真っ暗な世界。そこはとても居心地が良い。
微かに、温かくて柔らかくて、ふかふかしたものに包まれている感覚がある。
自分は今、何も考えていない。何も手に入れていない。何も変わっていない。
それなのに、どうしてだか、全てが満ち足りている。
何も要らない。何も欲しくない。
このままずっとこうしていられれば、それでいい。
…遠くで耳障りな音がする。いいや、意外と近くだ。
ああ、自分は寝ているのか。
夢の中は真っ暗だ。
当たり前だ。目を閉じているんだから。
騒々しい電子音が、一定の感覚で暗闇の中に鳴り響く。
pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi
……あァ、兄貴の目覚まし時計か。
pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi
…………五月蠅い。
pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi
つーか、何で俺の携帯のアラームと同じ音なんだよ……いつから設定変えたんだ?
pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi・pipipipi
いい加減、早く止めろよ兄貴……マジ、すげえイラつくからそれ…………
pipipipi・pipip
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
* * *
その後。
2回目のスヌーズで、「うわ、さっきから鳴ってるの俺の携帯じゃん」ということに気付き、勢い余って設定解除。
→三度寝開始(制限なし)。
結果:30分寝坊。
いつも乗ってたバスには普通に間に合いましたが。
現実では、兄貴とは部屋も別だし当然兄貴の目覚まし時計の音も自分の携帯アラームの音とは違います。(というか兄貴は目覚まし時計のアラーム機能を使わない)
が、夢現の中では兄貴と別々の布団(現実では2人共ベッド)で隣同士で寝ていて、兄貴の枕元にある目覚まし時計のアラームにキレているといった状況でした。
小学までは家族全員で川の字になって布団で寝ていたので、その頃の記憶でも引っ張り出してきたんでしょうか。
それにしても、携帯アラームのスヌーズ解除までやらかしたのは久し振りです。
大学行ってる時は遅刻するとか本気で洒落にならないんで、自分自身のリミッターが働くみたいです。(なので無意識の内にスヌーズ解除まですることはあまりない)
思えば自分はちょっとした夢遊病の気があるらしく、特に浪人中は自分でも自分ヤベーよと思ったことがしばしば。
自分の机に突っ伏して寝てた筈なのに起きてみたらベッドに寝てるというのはまぁ普通にあるかと。
自分の場合、これがあまりにも毎日のように続いたので流石に勉強しろよ自分と思い、部屋から出て少し廊下を歩いた先にある兄貴の部屋を借りて勉強することに。
ここなら机で寝ても気が付いたらベッドでしたなんてことは無いだろう、と。
(そもそも寝なければ良い話なのだが、勉強中どうしても眠くなった時は10~15分眠るとスッキリするらしいと云われていたので←問題は、自分の睡眠欲がそれを軽~くぶっちぎる点にあった)
で、案の定机に突っ伏して寝たわけで。
起きてみたら、ちゃんと自分の部屋のベッドで寝ていました。
…ちょっと自分が怖くなった瞬間。