内村鑑三は、『代表的日本人』で「日蓮から十三世紀という時代の衣裳と、批判的知識の欠如と、内面に宿る異常気味な心(偉人にありがちな)とを除去してみましょう。そのとき、私どもの眼前には、まことにすばらしい人物、世界の偉人に伍しても最大級の人物がいるのがわかります。私ども日本人のなかで日蓮ほどの独立人を考えることはできません。実に日蓮が、その創造性と独立心とによって、仏教を日本の宗教にしたのであります。他の宗派が、いずれも起源をインド、中国、朝鮮の人にもつのに対して、日蓮宗のみ、純粋に日本人に有するのであります」「日蓮の大望は、同時代の世界全体を視野に収めていました。仏教は、それまでインドから日本へと東に向かって進んできたが、日蓮以後は改良されて、日本からインドへ、西に向かって進むと日蓮は語っています。これでわかるように、受け身で受容的な日本人にあって、日蓮は例外的な存在でありました」(p176)。
内村鑑三が、自分の著書で日本の仏教が、やがて西へ向かい、世界へ行く、との日蓮の主張を紹介しているのも面白い。キリストもキリスト教が世界中に広まることを想像していたのだろうか。思想が生き残るかどうかは、その思想が普遍性を持っているか、誰が責任をもって広めていくか、いろいろな難しい要素が考えられる。私たちは1000年先まで生きることはない。1000年、2000年後の日本、世界はどうなっていくのだろうか。出来ればよく変わっていってもらいたい。人間はそれほど愚かでないから、よく変わっていくことは間違いないだろう。