耳をすませば明るい声が聞こえてきた。

張りの有る軽快な声は自分が知っている誰にも似ていなかった。

いたずらを仕掛けたような茶目っ気を感じるのは

この人がバイタリティーにあふれたエネルギーの塊を

おなかの中に入れている証拠でもあった。



人の話声で相手がどんな人柄か感じ取るのは簡単なようで

おれおれ詐欺もあるくらいあいまいなものでもあり

それでもその声の主と目の前に現れる人物の

一致と意外性を楽しむのは人間ならではの楽しみでもある。



女性の声を聞いてどんな人か想像するのは

私がもっとも得意とするものだが

男性の声を聞いてどんな相手が出てくるか想像するのは

意外と難しい。



男性は女性がどんな話声を好むか本能的に知っているので

電話の声だけではどのような人物かわからないもの。

それでも最近は相手によって私の声がいろいろと変わるので

相手がどのようなネットワークの中にいるのか

察することがわかりやすくなっている。



面白かったのは

話している間に私の声が妙に息が漏れた

(はひふへほ的に強く反応していた)

話しかたになったので

自分でも可笑しいな…とその人と会った後に

店に入り考えてみた。

店を出るとはひふへほ症は少々よくなったが

店との相性が悪かったようで下痢になった。



それで相手がどんな人物か特定できたのだ。

また次に話した人物には強い声が出た。

強い声の中に暗さが混じったので

同業者に近いのでは? と思った。



こうしていろいろな人と話すことで相手にはどんなネットワークが有るのか

察することが可能になったのだ。

休憩時間に話した「北の芝生はりのおばさん」とは

笑いが絶えずにほんとうに楽しかった。

この人は「北」と言ったがその「北」の意味はいわゆる「古い北」ではなく

「新しい北」のことなのだ。

うちの母と仲がいい人のような感覚で話せた。

お相手の方は、私が年寄りの痛みがよくわかる人間だったのが意外だったらしく

そして年寄りの楽しさも元気も考え方もよくわかったことを

喜んでいる様子だった。



上半身が重いと膝が痛むのよねえ…。

わかるわかる!!



年寄りほど若さを求めるし新しいものを欲しがるし

美味しいものを求めるし若い人を応援する力と思いやりを持っている。



深夜の焼き肉店から少し歩くのがつらそうになった80代の女性が4人出てきて

「焼き肉美味しかったー!」

と楽しそうに笑っているのを見ては

日本の国は、こういうご婦人がたに支えられているのねえ…と

老後の楽しい過ごし方を垣間見たのである。

女性たちの中で一番若いおばさんが車を運転し

あちこち遊びに出かける姿は

数年前の母の姿だった。



この焼き肉店には対象的に高校生男子かと思えるような

やんちゃな毛染めをしている男子が4人で

焼き肉食べ放題に挑んでいたのも印象的だった。

深夜に焼き肉を食べられるパワーを持っているのは

いま、この2チームだけなのかも…。



成人男性もたじたじのこの風景。



パワフルの源は損得勘定抜きにした仲間との

深夜の焼き肉店なのだった。



そういえば日本がとても元気だったころ。

会社員のみなさんは深夜に焼き肉を良く食べていたでしょう?

いまも深夜に焼き肉を食べている会社員はいるのか。



おしまい