今日も彼女は仏頂面で仕事を淡々とこなしながら、時々刺すように素早く人のミスに気付き指摘する。
余分な事は言わない。
ここ、違うよ。
こっちの期限より、そっちのが先だから
そっちやっちゃって。
そして自分の仕事に戻る。
カタカタカタ、パサッパサッ、カリカリ、トントン、サッサッサ。
彼女からは女性特有ののんびりふんわりした雰囲気は感じられず、
機械のように動き続ける。
顔は、鬼のようだけど。
「佐藤さん、お先に失礼します」
はい。と書類からちらっと目を外してはくれたけど、仏頂面はそのままで、声も面倒だというのがみっちり詰め込まれている。
けれど、
どうしてかな。
僕は、彼女を好きになってしまった。
「あの、今度食事に行きませんか」
張り詰めて、凍りついていた彼女を取り巻く空気が、ほんの少し柔らかなものになるけど、
それは僕の気のせいかもしれない。
珍しくポカンと力の抜けた表情で、
見上げてくる瞳は鬼ではなく少女のもののようで、
湯に浸かったかのような暖かな温もりが僕を支配する。
「じゃあ、30分待ってて下さい。終わらせますから」
もう仏頂面に戻っているけど、
仕事に取り掛かる姿勢も普段と変わらずで、
触るもの皆傷付けるぞというオーラが出ていたりするけど、
それでも、
僕には彼女が愛おしい。
いつか彼女も、僕を好きになってくれるように。
佐藤理美さん。
僕は、頑張ります。