俺は時々考える。
この世界には、どれほど俺の知らないことがあるのだろう。
どれほど報道されていない、当事者にしかわからない秘密があるのだろう。
本当はもっと近未来的で、アドベンチャーな世界があるのではないだろうか、と。
少し願望に近いのかも知れない。平凡で退屈な今の生活に飽き、知らないことばかりの外の世界へ行きたいのかも知れない。
到底無理だけど。
あぁ、なんてつまらない世界なんだろう。漫画やアニメの様な世界は所詮空想に過ぎないのだろう。
くだらない事だらけだと、くだらない事を考えては現実に打ちのめされ頭を痛める。
だが事態は急変する。雲の少ない空が妙に高く感じた、少し…いや、もう夏か?と思わせるくらい気温の高い五月のある日に、事件は起きた。
「ふあぁ~あ」
いつもと何等変わりない朝。退屈で摩訶不思議ひとつない朝。学校への道程で大きな欠伸をかく。
「おす。随分とでかい欠伸だな。お疲れか?」
背後から突然聞こえた、聞き慣れた男の声に反応し俺は声のするほうへ首を向けた。そこにいたのは身長171.3�、体重65Kg、サッカー部のエース様で俺のクラスメイト。予想していた奴その人だった。
いつも通りだよと軽く流し、歩を進める。
「にしてもアレだな。今日は楽しみだよな。」
サッカー少年はうきうきと声を弾ませている。
端から聞いたら、全く通じない一言ではあるが、同じクラス故俺にはなんのことかわかっていた。
———学校のマドンナ。保健室に舞い降りた白衣の天使、保健体育の美人教師。男なら誰もが一度は好きになるであろう、女なら誰もが一度は憧れるであろう、性格温厚、容姿端麗。
そして今日、その女神の授業があるのだ。
このくだらなくてつまらない世界で、俺はこの授業の時間だけは心が躍る。男として、当然だろ?
きっと過半数以上の男子生徒はそう思っているに違いない。
「つまんねぇ学校でも唯一、ハイジ先生の授業があってよかったよなー。」
ハイジ先生。誰がつけたか、そう呼ばれ親しまれている。この人を狙う男性教諭も少なくないとか。
「運動部のやつらはわざと怪我してまで会いに行くやつとかいるからな。」
ふてぶてしい奴らだ。まあそいつらはそいつらで会いたくて必死なんだろうけど。
「あーあ、彼氏いねぇーってのは本当なんかねぇ?」
ぶちぶちと俺にはどうでもいいことを学校の門をくぐるまで言い続け、教室につくまで触れなかったというか、うっかりしていたが
「お前、部活は?」
そうだ、サッカー部なんだから朝練くらいあるだろう。
だがこいつは、呆れ返っているのをわざとらしく表現し
「ないない。テスト前だしな。つーかそもそも、うちみたいな弱小校なんか朝練したっていみねぇよ。」
やれやれ、と。お前いつからそんな偉くなったんだ。
「そりゃ、俺がエース語るくらいだしな。」
それもそうだ。ていうか、近々テストかよ。
「ま、赤点はとりたくねえよな。超ダセエし。」
はははと笑い流し、俺は俺の席に着く。ろくに中身のない鞄を置き一息つく。
…はあ。ほんとくだらねー。
教室の天井を眺めながら、俺はそう思っていた。
この世界には、どれほど俺の知らないことがあるのだろう。
どれほど報道されていない、当事者にしかわからない秘密があるのだろう。
本当はもっと近未来的で、アドベンチャーな世界があるのではないだろうか、と。
少し願望に近いのかも知れない。平凡で退屈な今の生活に飽き、知らないことばかりの外の世界へ行きたいのかも知れない。
到底無理だけど。
あぁ、なんてつまらない世界なんだろう。漫画やアニメの様な世界は所詮空想に過ぎないのだろう。
くだらない事だらけだと、くだらない事を考えては現実に打ちのめされ頭を痛める。
だが事態は急変する。雲の少ない空が妙に高く感じた、少し…いや、もう夏か?と思わせるくらい気温の高い五月のある日に、事件は起きた。
「ふあぁ~あ」
いつもと何等変わりない朝。退屈で摩訶不思議ひとつない朝。学校への道程で大きな欠伸をかく。
「おす。随分とでかい欠伸だな。お疲れか?」
背後から突然聞こえた、聞き慣れた男の声に反応し俺は声のするほうへ首を向けた。そこにいたのは身長171.3�、体重65Kg、サッカー部のエース様で俺のクラスメイト。予想していた奴その人だった。
いつも通りだよと軽く流し、歩を進める。
「にしてもアレだな。今日は楽しみだよな。」
サッカー少年はうきうきと声を弾ませている。
端から聞いたら、全く通じない一言ではあるが、同じクラス故俺にはなんのことかわかっていた。
———学校のマドンナ。保健室に舞い降りた白衣の天使、保健体育の美人教師。男なら誰もが一度は好きになるであろう、女なら誰もが一度は憧れるであろう、性格温厚、容姿端麗。
そして今日、その女神の授業があるのだ。
このくだらなくてつまらない世界で、俺はこの授業の時間だけは心が躍る。男として、当然だろ?
きっと過半数以上の男子生徒はそう思っているに違いない。
「つまんねぇ学校でも唯一、ハイジ先生の授業があってよかったよなー。」
ハイジ先生。誰がつけたか、そう呼ばれ親しまれている。この人を狙う男性教諭も少なくないとか。
「運動部のやつらはわざと怪我してまで会いに行くやつとかいるからな。」
ふてぶてしい奴らだ。まあそいつらはそいつらで会いたくて必死なんだろうけど。
「あーあ、彼氏いねぇーってのは本当なんかねぇ?」
ぶちぶちと俺にはどうでもいいことを学校の門をくぐるまで言い続け、教室につくまで触れなかったというか、うっかりしていたが
「お前、部活は?」
そうだ、サッカー部なんだから朝練くらいあるだろう。
だがこいつは、呆れ返っているのをわざとらしく表現し
「ないない。テスト前だしな。つーかそもそも、うちみたいな弱小校なんか朝練したっていみねぇよ。」
やれやれ、と。お前いつからそんな偉くなったんだ。
「そりゃ、俺がエース語るくらいだしな。」
それもそうだ。ていうか、近々テストかよ。
「ま、赤点はとりたくねえよな。超ダセエし。」
はははと笑い流し、俺は俺の席に着く。ろくに中身のない鞄を置き一息つく。
…はあ。ほんとくだらねー。
教室の天井を眺めながら、俺はそう思っていた。