こんにちは
!
久々に読んだ本のメモを書きます。
須藤みか
『エンブリオロジスト―――受精卵を育む人たち』
(小学館、2010年)
普段は、ブログなどで
自分と同じ立場の患者目線で
不妊治療と向き合う方の声を目にすることが圧倒的に多いですが、
逆の立場からは何が見えるのだろうと、
このところ、だんだん気になり始めてきました
。
タイトルのエンブリオロジスト(Embryologist)は
胚培養士のことだそうです。
私たちの代わりに(?)受精の瞬間に立ち会ってくださる
培養士さんたちには、どんなバックグラウンドがあり、
どのようなお仕事をされているのか、
興味を持ったので読み始めました。
私が興味深く感じたところは以下の箇所です。
(この本の出版から10年以上経っているので、
現状とは異なるところもあるかも知れません)
日々多くの卵子と向き合っている熟練培養士によると、
それぞれの卵子の
「立体感や弾力感、つやなど」の違いによって大体の年齢がわかる。
(もちろん個人の体質差もある)
臨床検査技師を経て胚培養士になる人、
理学部、農学部出身で、
動物の生殖を研究してきた経験を活かして培養士になる人もいる。
胚培養士は国家資格がない。
重要な役割を担っているのに、
研修は各施設に任されている。
どのような指導者の下でトレーニングを受けたか、
あるいは個人の能力や
就職後の努力による差が大きい。
ヒトの卵子を扱うという重圧や
激務により、やめてしまう人も多い。
(卵子の操作が怖くなってやめてしまった人の話を読んで、
あぁ、本当に大変なお仕事だと思いました。)
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不妊治療の専門医院を探し始めた頃、
各病院のHPなどを覗くと
しばしば、受精卵などの取り違え防止システムなどの説明が
書かれていて、
当たり前だろうになぜ?と
不思議に思ったのですが、
実際にかつて日本で取り違えの事故が起こり、
大々的に報道されたことがあったというのを、
この本で初めて知りました。
本の中では
各地の現場で働く医師や
培養士らへのインタビューを通して
一体、どのような労働環境がこの事故の背景にあり、
生殖医療の現場にどのような影響をもたらしたのか、
あるいは
実体験に基づくエピソードから垣間見える、
研究や現場の仕事に対する思い、葛藤、
そして
筆者自身も不妊治療の経験者として何を見てきたのか
などなど、様々な角度から
胚培養士のお仕事や現場の状況、
問題点などが語られており、
今まさに技術面、制度面ともに試行錯誤の続く
生殖医療の現場の舞台裏を垣間見せてくれる一冊でした。
残念ながら私自身は、
培養士さんに直接お礼をお伝えできる場は
身近なところにはないのですが、
(病院によっては
培養士さんとお話できるところも
あるみたいですよね...
ウラヤマシイ)
受精卵の移植の日は、
一つ一つの受精卵が
培養士さんの手を経て
自分の体に戻ってきているのだ
ということを思い出しながら、せめて
感謝の気持ちで
(受精卵を)受け止めたいなと
思いました
デヘヘ。
(↑移植が延びて思いが募りすぎ)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました![]()