『チラシはいかがですか?、
チラシはいかがですか?』

駅前の交差点は、
冬の冷たい北風のせいで、
人通りはないに等しい。

それなのに1人の男がチラシ配りをしているのであった。

かじかんだ手を息で温めながら、人が行き交うたんびに律儀に声を掛けていた。

『チラシー、チラシはいかがですか?』

しかし誰一人、
その男の手に持つチラシを受け取る人などいないのだ。

こんな冴えない中年から、
よくわからないチラシを配れても、
そりゃ誰も受け取ってはくれやしない。

『はぁ、今日もこんなにチラシが残ってしまった。親方には全部配り終わるまでは帰ってくるなと言われているけど、外は寒いし、人もいない。あったいどうしよう』

夜もますます深まり、
寒さもいよいよ深刻さを増してきた。

『そうだ、このチラシを一枚燃やしたら、
 少しは暖かくなるだろうか』

男は家でナスを焼くために買ってきた小型のガスバーナーを取り出して、
一枚チラシを燃やしてみた。

チラシはぱちぱちと音を立て燃え、
やがて炎をあげはじめた。

火のついたチラシを地面に置き、
男はかじかんだ手を炎に当てながら、座り込んだ。

暖かい。
男はほっとする。

すると炎の中から、何かの囁き声がするのです。

男は目を擦って炎の中をよーく覗いた。

ぱちぱちと音を立てる火の中で、
何かがうごめいているのである。

何かを呟いている。

ざわざわ。がやがや。
きゃっきゃと
時折、子供の笑い声。

犬の鳴き声に、鳥のさえずり。

男はもう一度、目をこする。

今度はもっと炎に顔を近づけてみる。

なんだかお祭りのような、
人だかり。

とても暖かい。
男も不思議と楽しくなってきた。

、と思っているうちに、
炎は次第に小さくなってきて、
やがて消えた。

現実に戻り、
忘れた冬の寒さが男の体に吹きかかる。

『チラシー、チラシはいかがですか?』

あの炎の中に見たものは、
いったいなんだったのか。

ただはっきりしているのは、
チラシを配りきれなかったために、
男は親方に怒られることだけだった。



ノート

○イベント情報
『実験エコ場市』

内装建築現場で出た余った商材、
塩ビタイルやビニルクロスなどが手に入る
実験エコ場市。

2月20日〜23日の4日間、
9時〜17時(23日のみ16時)
にて開催致します!

入場料は1100円税込です。

場所は
東京都墨田区菊川1-1-9
都営地下鉄 森下駅A5の出口から徒歩2分程度の
場所にあります。

当日はお楽しみに!!