誰かの落とした指輪を踏んだ
正確には、指輪らしきもの
清澄白河駅へとハナウタを口にしながら向かう途中のこと
ひとりの時は僕は歌を歌う
誰にも聞こえない声量で、マスクの中で歌う
その日の歌の内容は
玄関先の鉢植えの花が倒れているという歌だった
気分で思い付いた即興の歌である
しとしと雨の道中だったので
少ししけった歌が浮かんだのだろう
玄関先の鉢植えが倒れていたのみた
土が地面に溢れて
それでも倒れた花を必死に守ろうとしてた
そんな歌を口ずさみながら
清澄白河の地下鉄へ降り口に入るあたりで
地面に金色のリングが落ちているのが目に入った。
これは指輪かもしれないと
頭をよぎる
地面に降りようとする僕の右足はもう制御できず
進撃の巨人のよつに、容赦なく指輪を踏み付けてしまった
これは指輪かもしれない
あっと思ったくらいで
別にどうってことなかったのだが。。
1歩、2歩
多分10歩くらいそのまま駅に向かって歩いたろう
心の中に黒いものが広がり始めた
コロナウイルスみたいに闇が心の中に蔓延していくのがわかった
耐えられなくなって僕は戻ってその指輪を探した
すぐにそれは見つかった
それはおそらく何かのキーホルダーのリングだけだった
なんだ
でも戻ってよかった
僕には一瞬でもそれが指輪に見えたのだから
僕はそれを拾い、
歩道の足元くらいの高さの囲い柵の上にちょこんと乗せた
そして何事もなく、
次の予定へと向かうのであった
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