早朝、
うちのチャイムが鳴る。

ドアが開く。
どうやら昨晩施錠を忘れていたようだ。

社長が部屋にやってきた。

連絡がつかない自分を気遣い、
様子を見に来てくれたらしい。

社長の会社では帰宅命令が出たらしい。
県北ではまあそうだろう。

県南の実家に帰る途中とのことで、
あるだけの飲料物を運んでいた。

道中見てきたところによると、
海岸沿いの様子は特に酷かったという。

とりあえず知人友人の安否も確認出来たと言い、
現状では人災が無かったことを聞いて安堵する。

しばらくお互いの状況を話し、
「少ないけど」とは言いながら、
烏龍茶を4本置いて社長は実家に向かった。
いい奴だオマエは、
何かで返すよ。

改めて部屋を見ると、
揺れの凄さを思い知らされる。

うずたかく積んでいた趣味の物は、
ことごとく散らばっているが、
割れ物はほとんど無いので、
量は多くともなんとかなる。

生活スペースさえ確保出来れば、
この際捨てたっていい。

怖いのは台所だ。
皿やグラスが割れている。

昨日の夜は気付かなかったが、
散らばった物をどけていくと、
破片がそこかしこに落ちている。

使い慣れた茶碗もコップも、
割れていた。
注意深く片づける。

昼過ぎ、
何かのはずみに電気が復旧していることに気づく。

早速PCを起動し、
来ていた心配メールに返事をする。

コーチからも電話がある。
どこも大変な様子。

依然断水中。
水分だけを取りながらの作業では、
水が尽きるのもそう先ではない。

職場の建物には高架水槽があったのを思い出し、
ヤカンとポットを持ち、
家を出る。

信号が動いている、
給油待ち行列を見かける。
自転車が多い。
どの店も閉店している。

職場に着くと、
事務室に電気がついている。

誰か居たのかと思えば、
停電前につけたままのスイッチがそのままだっただけ。
電気復旧で点いていたのだ。

電気は消し、
幸いにも蛇口から出る水を貰う。

帰ろうと思った頃に、
知人が現れる。

聞いてみると、
同じく水を探していたところで、
自分の車を見つけて寄ってみたとのこと。

持っていた2Lペットボトル2本に、
ギリギリまで水を入れ持ち帰らせた。

帰宅する。

何㎞続くのか、
給油行列は更に長くなっていた。

荒れる部屋の中、
寝床だけは確保。

揺れは収まらないが、
電気がある、
昨日よりはいい。










森山田