青春のころを思い出してみると
あのときの気持ちを取り戻せることは
二度とないだろう
ー海よりも、大地よりも、
そしてすべての人間よりも長生きして
永遠に生き続けられるという気持ちを。

- ジョセフ・コンラッド

Eggleston

タカノさんは僕より10歳以上年上で
身長150cmの俳優であり
レンタルビデオショップの店員だった。

僕は大学生でウルトラメガトン級にヒマ人で
レンタルビデオショップでバイトをしていた。

クソ暑い夏、仕事の終わったある日、
タカノさんは自分の出演した
Vシネマのビデオを僕に貸してくれた。

山寺に出家した美人の尼さんが
行きずりの男に犯されるストーリーだ。

タカノさんは山寺に住む小男の役で
頭をつるつるに剃り上げていた。

僕はそのビデオを
ソーダ味のガリガリくんを
シャリシャリ食べながら
全部早送りでサクサク見た。

正直言って、
タカノさんの役は
何のためにあるのか
よくわからなかった。

いらねんじゃね、この役って。

って。

次の日、タカノさんにビデオを返すと
感想を聞かれた。

ーどうだった?

って。

僕はだいぶ迷った上に

ー尼さんもんって
 あんまないっすよねぇ

と言った。

自分史上最高、
アホみたいな答え。

タカノさんは無言だった。

僕は、いやー違うんすよータカノさん
もうちょい気の利いたこと言うべーか
と思って、

ーアレ、ホントに坊主にしたんですか

と聞くと、タカノさんは

ーああ、そうなんだよ、あんときはさ、
 お客にジロジロ見られて恥ずかしかったなー

と寂しげに笑いながら言った。

今になってみても
自分が何を言うべきだったか
なんて全然わからない。

できれば
そんなアホみたいな答えは
宇宙の果てに
まとめて全部捨てしまいたい。

けど仮にタイムマシンがあって
同じ場面に行っても
アホみたいなことを
無神経に言って
同じことを繰り返すんだろう。

タカノさんごめんなさい。
よくわかんないけど
あんなの見たくないです。
こんなクサれた店やめて
カッコいい映画に出てください。

そう思っていても
口にすべき言葉が何なのか
よくわからない。

果たして
そう思うべきかどうかも
よくわからない。

人生ってなんか
そんなんですよね。

言葉じゃうまく
説明できないんですけど。