長女が今年の春から通い始めたダンス・スタジオは、とても良い所。
声が出るようになって、先生から
「11月のミュージカルでお母さんも出ない?」
と、誘われた。
舞台や歌が好きな私は二つ返事で
「はい」
と答えた。
ちゃんと歌えるかなんてわからないけれど、私がやるのは歌と踊りだけ。
セリフはないし、ソロもないから大丈夫だと思う。
苦手な電話も出るように心がけ、無謀な様なミュージカルにも出ることにした。
逃げてるだけじゃなくて、ダメでもぶつかって行こう。
やって出来なくても、やらないで出来ないよりきっといい。
でも始めたら絶対に凹んじゃいけない。
声が出なくても落ち込んじゃいけないと、自分に言いきかせた。
ミュージカルなので、歌の先生とも話する機会が増えた。
長女はダンスと歌を合わせて習っているので先生とは面識はあったが、何せ話せなかったので会話したことはなかった。
歌の先生が私に、
「今度声をみてあげるね。どこが出なくて、どこが出るのか」
と、言ってくれた。
「不思議なんですが、歌はわりと声が出るんです。話すのが出しずらくて・・・・・」
と私が言うと、
「そうなのよ、それが普通なのよ。声が出なくなった人はそれが普通なの。
だから、出やすい音を探してそこに合わせて行くのよ。そういうトレーニングをすればいいの」
そそそ、そうなのかぁ~!!!
知らなかったよ。
声が初めて出たのも歌で、その後も暫く会話は出来なくても歌は歌えた。
どうして歌は出るのに、会話はできないのだろう??
と不思議でたまらなかったんだ。
病院の先生も、そんな事は知らないから教えてくれなかった。
周りでこんな病気にかかった人も居ないし・・・・・。
やはり専門家は違うね・・・・・・・。
「歌うように、高い音のが話しやすいと思うわよ。鼻腔を使って話していくとだんだん良くなるわよ」
だって。
すごいっっ!
すごいっっっ!!!
やはり、このダンススタジオにあの日に来たのは、運命なんじゃないかと思う。
導かれたんじゃないだろうか?
ここへ行きなさいって。
ここへ行けば、失ったものを取り戻せるって。
失った声、
もう二度と自分が立つことはないと思っていた舞台。
私はここでダンスを習う子供以上に、色々なものを得ているのかもしれない。
舞台に立つと思うと、ワクワクしてゾクゾクする。
やはり私は舞台が好きなんだなぁと、当たり前だった事を思い出した。
このスタジオの先生の人柄に惚れていたが、やはりそういう人の元には良い人が集まって来るのだろう。
歌の先生もとっても良い方で、温かいオーラが沢山出ている気がする。(見えないけどね)
先が見えない暗闇の中で、ぽぅっとここだけ明るくて、気が付けば自分の進む先も照らしてくれる
そんな感覚。
どうしたら前みたく話せるの??
と、ずっと思っていたけれど、なんだか大丈夫な気がしてきた。
「でも焦っちゃだめよ、ゆっくりよ」
歌の先生が言う。
今まで何度となく周りから言われてきた言葉。
前は気休めに聞こえていた言葉。
今は素直に受け止められる。
先生が言うと、魔法の言葉のように、私の中にするりと入っていく。
勇気を出して良かった。
私の道は続いている。